裁判員裁判:中国人被告に無罪…覚醒剤密輸「認識に疑問」

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110125k0000m040085000c.html

被告は10年4月に観光ビザで入国し、東京都内のホテルで郵便を受け取った。中身を覚醒剤と認識していたかが争点だった。検察側は▽入国後に携帯電話で関係者と連絡を取った履歴がなく、郵便受け取りを事前に把握していた▽受け取り名が偽名だった−−などとして有罪を主張した。
判決は、検察側が証拠提出した携帯電話の発着信履歴に、押収後に発信した記録が残されていたことから「不透明な操作が加えられた疑いが残る」と証拠改ざんの可能性に言及。また税関職員が誤って一部の記録を消去したことなどから信用性を疑問視した。
また被告に資産があることから、密輸の動機も不明と指摘。「郵便は売春仲介者への土産として知人から渡された」との被告の弁解については「逮捕当時からほぼ一貫しており、ただちに虚偽とは言えない」と述べた。

私は、検察庁で最後に勤務したのが千葉地検で、刑事部で麻薬係をやっていたので、成田空港絡みの薬物密輸事件を次々と担当して、この種の否認事件で苦労した経験がありますが、元々の、有罪方向の証拠が薄く、公判になると、一種の水掛け論状態になりやすいということを、改めて強く感じます。
従来は、裁判所が、この種の事件で怪しきは罰する、弁解に怪しさがあれば有罪という方向で、検察庁をアシストしていた面がありましたが、裁判員裁判になり、そういったアシストは検察庁として期待できなくなり、起訴する際の証拠構造や立証方法を徹底的に見直さないと、今後もこの種の無罪判決が続くのではないかと思います。