酒井法子被告追起訴、保釈金は1000万円

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090912-00000030-sanspo-ent

酒井被告は、7月30日ごろに夫の高相祐一被告(41)、長男と訪れていた奄美大島のホテル客室で若干量の覚せい剤を使用したとして追起訴された。併せてこの日、高相被告も千葉・勝浦の別荘で覚せい剤を所持した罪で追起訴された。酒井被告が自宅で覚せい剤を使用した疑いについては起訴猶予処分となり、一連の捜査はこれで終結する。

昨日は、東京地裁周辺でマスコミ関係者が右往左往していて、私も、読売テレビ「情報ライブ・ミヤネ屋」の中継で、東京地裁前から少しだけ登場しました。昨日、酒井被告人が東京地裁へ押送されたのは、勾留質問(報道では「拘置尋問」などとされていますが)のためで、起訴された覚せい剤所持の件のみで勾留されている状態で追起訴され、追起訴事実(使用)についても勾留状を出すよう、追起訴にあたり東京地検東京地裁に求めたため(別件勾留中求令状、と実務では言います)、東京地裁が職権で勾留状を出すかどうか決めるにあたり、被告人に対し質問を行ったものです。法律上必須の手続ですが、覚せい剤使用罪で勾留の理由や必要性が認められないということは、通常、考えられず、問題なく速やかに勾留状が出されたはずです。
こういった追起訴の場合、求令起訴するかどうかはケースバイケースで判断されますが、所持で勾留されていれば、使用で追起訴しても敢えて求令しないということは多く(それが通例でしょう)、東京地検が、敢えて求令した背景には、使用罪についても罪証隠滅の恐れが高く、保釈を阻止するためには使用罪についても求令して二重勾留の状態にしておいて、所持罪だけの勾留であるが故に保釈が認められることを徹底阻止するという固い決意が感じられます。
記事では、保釈金は1000万円も、とされていますが、押尾被告人のケースが、MDMAの使用で400万円であり、酒井被告人のケースも、覚せい剤の使用と所持(微量)のみの起訴ですから、収入が多い芸能人であったとはいえ、1000万円というのはやや多額に過ぎ、500万円程度というのが妥当な線ではないか、という気がします。ただ、裁判所が、東京地検が強く反対し微妙さを感じつつ保釈を許可する、ということになった場合、保釈保証金を上積みさせて、600万円から800万円程度にまで引き上げてくる、ということは、可能性としてはあり得るかもしれません。
覚せい剤使用については、尿から覚せい剤成分が検出されない中での起訴で、かなり異例な起訴(希有な起訴、と言ってもよいでしょう)ということは間違いなく言えるでしょう。
このようなケースが起訴された例があるということについて、先日、コメントしましたが、

三尾有加子「実例捜査セミナー 毛髪鑑定を利用して覚せい剤使用を立証した事案」捜査研究683号p26
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090821#1250822539

酒井被告人の覚せい剤使用の起訴が、毛髪鑑定に依拠した起訴かどうかはよくわからないものの、私自身は、上記のエントリーでのコメントのように、毛髪鑑定に依拠した覚せい剤使用の起訴ということには疑問を感じています。
他の可能性としては、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090811#1249950013

でコメントした中の、「発見、押収された覚せい剤が、使用した覚せい剤の残余であるということで、覚せい剤性を認定する」という立証(その場合、「残余」は、酒井被告人または夫が所持していた覚せい剤ということになります)がありますが、そうであっても、かなり異例なものにはなります。
尿鑑定によらない覚せい剤使用罪の立証が抱える大きな難点は、そういった立証が可能であるとしても、上記の捜査研究中の論稿で著者の検事が指摘しているように、使用態様の認定につき、被疑者、被告人の「自白」に大きく依存することになり、公判維持が困難になる大きなリスクを抱えることになる、ということではないかと思います。だからこそ、そういった起訴は通常はしないところ、酒井被告人について異例かつ特別な起訴がされたということにはなると思われ、覚せい剤を常用していた可能性が高い酒井被告人をかばう気は起きないものの、法執行の平等という観点から、こういった起訴にはやはり疑問を感じます。
報道によれば、覚せい剤使用に関する酒井被告人の供述には変遷があったとのことであり、今後、自白の信用性を含め公判で争いが生じる可能性もないとは言えないでしょう。東京地検としても、元々の証拠構造の脆弱性や今後の公判維持を懸念して、上記のように、あえて求令起訴して保釈を徹底的に阻止しようとしている可能性が高いように感じられます。なぜ、そこまで無理をするのか、というのが今の私の率直な印象ですね。