http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090822-00000085-san-soci
覚せい剤取締法違反(使用)容疑で2度逮捕された。2度目には実刑判決を受け、1年8カ月服役。出所後、夫とは離婚したが、すぐにまた覚醒剤に手を出し、依存生活に戻った。「クスリをやめられると過信していた。だけど、やめられなかった」
出所後に交際した男性は依存から救い出そうとしてくれた。しかし、どうしても覚醒剤をやめられない彼女の元をまもなく去っていった。やがて仕事にも行かなくなり、家賃を払えなくなってネットカフェや野宿で夜を過ごした。ついには覚醒剤を使っても高揚感は得られなくなり、「死ね、死ね」という幻聴が聞こえた。平成18年4月、自殺を図ったが、一命を取り留めた。
「絶対にやめよう」と決心したのは、それから4カ月後。親類の「お前はみんなから大事にされてきた。目を覚ませ」という言葉や、好きだった男性の顔を思い出し、暴れそうになる心を抑えた。支援者の助力を得て大阪市内に家を借り、店舗販売員の仕事に就いた。それから3年間、一度も覚醒剤に手を出していない。
私の場合、検察庁在職当時、最後に勤務した千葉地検では麻薬係検事でしたが、その前の11年の間にも、薬物事件の捜査・公判に従事する機会は多く、薬物に依存して事件を繰り返し、人生を台無しにしている人々は数多く見てきました。
そういった人々も、最初から常習者であったわけではなく、シンナー等の比較的入手しやすい薬物から「入門」し、次第に覚せい剤等のハードな薬物へと進み、薬物を介した人と人とのつながりの中にどっぷりと浸かってしまって、執行猶予付き判決を受けても、服役しても、やめることができず刑務所とシャバを行ったり来たりの人生、というのが典型的なパターンです。上記の記事に出てくる人は、そういった連鎖を何とか断ち切ったようですが、なかなか断ち切ることは困難であるのも、また事実です。
現在、酒井容疑者やその夫、押尾容疑者の事件が話題になっていて、起訴できるかできないか、といったことに関心が集まっているような面がありますが、この機会に、そういったことだけでなく、違法な薬物というものが、いかに人を狂わせ、人生を大きく暗転させ、本人だけでなく周囲の人々を苦しめてしまうか、その深刻な実態といったことにも、より多くの人に目を向けてほしいという気がします。