違法捜査で起訴取り下げ 静岡

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140617/k10015297901000.html

浜松市に住む30代の男性は、ことし4月、自宅で覚醒剤を使用したとして、逮捕、起訴されました。しかし、別の恐喝事件で逮捕された元暴力団員が取り調べの中で、「知り合いの警察官に頼まれて男性に覚醒剤を譲り渡した」と供述したことから、警察がさらに捜査を進めました。
その結果、静岡県にある細江警察署の薬物担当の巡査部長が、取締りの実績を上げる目的で男性に覚醒剤を譲り渡したことや、元暴力団員に協力に対する謝礼を支払ったことを認めたということです。このため静岡地方検察庁は、違法な捜査が行われた疑いが強まったとして、17日、男性に対する起訴を取り下げました。

警察捜査の中で、銃器、薬物事犯は、かつては違法捜査の宝庫のような状態で、銃器であれば、例えば、警察官の指示に基づいて暴力団関係者が銃器を調達してきてそれをいかにも捜査の過程で発覚したかのように見せかけて事件化し、見返りに余罪を握りつぶすとか、そういったことは日常茶飯事に行われていたこともありましたが、各地で問題化し是正が図られて現在に至っていて、今や、かつてのようなやりたい放題状態は影を潜めていると言えるでしょう。ただ、そうした体質は、一朝一夕に改まるものでもなく、その残滓のようなものは今なお各地で残っていると見るべきで、それがこのような形で出てきた、と見るべきだと思います。
記事にある、「取締りの実績を上げる目的で男性に覚醒剤を譲り渡した」その覚せい剤をどこから調達してきたかですが、1つの可能性としては、日常、様々に行う捜索・差押の際に、見つけた覚せい剤の一部をくすねてストックしていた、ということでしょう。複数の覚せい剤入りのパケ(ビニール袋)がある場合に、1つや2つくすねても、捜索・差押対象者にはわからなかったり、おかしいなと感じても差し押さえられる覚せい剤が少なかったということで損はないので言い出さず、ということは十分あり得ます。そうしてストックした覚せい剤を、上記のように使ったり、あるいは、捜索に行ったところ何も出ないのでこっそり置いていかにもそこにあったかのように装って押収、立件する(被疑者に同種前科があるような場合は否認しても「所持」が認定される可能性が高いでしょう)、といったことも、あり得なくはないという話になります。
先日の袴田事件再審決定で、警察捜査における証拠ねつ造が指摘された静岡で、このような事件が起きるのも、単なる偶然とは思いにくいものがあります。
警察庁も積極的に乗り出して、違法捜査の実態を解明しないと、今後の全国の薬物捜査、さらには捜査全般に対する裁判所、国民による強烈な不信感を招き、重大な悪影響を及ぼしかねないと強く感じるものがあります。