http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090717-00000010-mai-soci
捜査当局は前日に山口組系関係者が刺殺されたことへの組織的な報復とみており、地検は公判で裁判員が伊藤容疑者や証人に背後関係を追及する質問をした場合、事件関係者から危害が加えられる可能性があると懸念している。
裁判員法は3条で除外規定を設け、その条件を「裁判員候補者や裁判員が畏怖(いふ)し、出頭を確保することが困難な状況」などとしている。ある捜査関係者は「広く国民に参加してもらうための制度だから、除外のハードルは高い。実際に襲撃の予告などがなく、懸念があるだけでは裁判所に認められない可能性がある。だが、予告なしに襲われる心配もあり、除外対象とすべきでは」と話している。
裁判員法3条1項では、
地方裁判所は、前条第一項各号に掲げる事件について、被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により、裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり、そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、これを裁判官の合議体で取り扱う決定をしなければならない。
と定められ、単に危険だから、というだけでは駄目で、
1 被告人の言動、被告人がその構成員である団体の主張若しくは当該団体の他の構成員の言動又は現に裁判員候補者若しくは裁判員に対する加害若しくはその告知が行われたことその他の事情により
2 裁判員候補者、裁判員若しくは裁判員であった者若しくはその親族若しくはこれに準ずる者の生命、身体若しくは財産に危害が加えられるおそれ又はこれらの者の生活の平穏が著しく侵害されるおそれがあり
3 そのため裁判員候補者又は裁判員が畏怖し、裁判員候補者の出頭を確保することが困難な状況にあり又は裁判員の職務の遂行ができずこれに代わる裁判員の選任も困難であると認めるとき
という、かなり厳格な要件になっていますから(特に上記の1)、上記の記事に出ている程度の事情では、3条1項の決定は困難でしょう。暴力団の抗争事件だから、という程度の理由で決定が出るような、緩やかな要件ではありません。
私も、検察庁にいた当時は、暴力団関係者の取調べや、そういった人々が関係する公判立会を多数経験しましたが、彼らは、裁判所、裁判官といったものに対しては、それなりの敬意は持っていて、イタリアのマフィア等のように、気に入らないから殺害するとか、裁判所の建物や裁判官の自宅を爆破する、といった行動には、通常、出ないものです。ただ、裁判員のような素人が入ってきて、それらに影響力を及ぼすことで、判決結果が変わりうる、ということになれば、先日まで放送されていたフジテレビのドラマ「魔女裁判」のように、じわじわと脅かすとか金で買収する、といった行動に出る可能性はないとは言えません(暴力団関係の事件に限ったことではありませんが)。
しかし、そういった危険性は、元々、制度の中に内在するものであり、だから裁判員を除外する、と言っていては、裁判員制度自体が成り立たないでしょう。