西濃運輸が鯨肉の遺失物届 NGO提示の箱か

http://www.asahi.com/national/update/0516/TKY200805160110.html

調査捕鯨でとられた鯨肉の一部を乗組員が無断で持ち出したとされる疑惑で、環境NGO「グリーンピース・ジャパン」が15日の記者会見の際に宅配便で送られたとされる鯨肉を示したことについて、西濃運輸(本社・岐阜県大垣市)が「宅配便の段ボール箱1個がなくなった」として、青森県警青森署に遺失物届を出したことが16日わかった。

グリーンピースは、青森市西濃運輸支店から箱を無断で取ってきたことを認め、「箱を開いて鯨肉を確認し、犯罪行為を確認した以上、元に戻すことは犯罪行為を助けることになる。私たちとしては正しいやり方だったと考えている」と話している。

「箱を無断で取ってきた」行為については、窃盗罪が問題になりますが、窃盗罪の保護法益との関係と、不法領得の意思の点において、なかなか興味深いケースになっていると思います。
グリーンピースは、「鯨肉の一部を乗組員が無断で持ち出した」として、この点を業務上横領罪に該当すると考えているようですが、仮に、そうだとすると、横領された被害品を無断で取ってきた、ということになり、保護されるべきものがそこにあったのか、ということにはなります。本権説、占有説、平穏な占有説など、諸説ありますが、西濃運輸の占有というものも、本権の所在とは別に、一定の保護には値すると思われますから、この点で無罪を導く、というのは、やや難しそうです。
不法領得の意思をどのように考えるか、という点についても、諸説ありますが、経済的用法に従った利用・処分意思はないものの(そこは明らかでしょう)、権利者を排除し他人の所有物を自己の所有物として振る舞う意思については肯定の余地があるように見受けられ、考え方によっては窃盗罪成立とされる可能性があります。
今後、遺失物届を受理した警察がどのような対応をとるかも注目されるように思われます。