http://www.asahi.com/national/update/1222/SEB200712210012.html
正式な請求に先立ち意見書を出した理由を、地検は「地裁の命令で訴因変更したことを明確にするため」としている。地検が自発的に訴因変更した場合と同様にとられると、一審判決で業務上過失致死傷罪が適用された場合に、高裁に危険運転致死傷罪の適用を求めて控訴することができなくなる可能性があることを考慮したという。
地検によると、地裁から訴因を変更するよう打診されたのは、公判結審後の12月に入ってから。拒否したところ、18日に変更の命令を受けた。命令に応じない場合、地裁は危険運転致死傷罪については無罪を言い渡すとみられる。
裁判所の命令について、訴因の「変更」を求めたという報道と、「予備的追加」を求めたという報道があり、よくわからないのですが、検察庁は、予備的追加で応じていますから、後者であるとすれば命令に従い、前者であるとすれば命令には従わず無罪を回避することができる限度で対応した、ということではないかと思います。
変更してしまえば、変更後の訴因通りの判決に対し、事実誤認を理由に控訴することは困難でしょう。主位的訴因と予備的訴因があり、予備的訴因が認定された場合、主位的訴因が排斥されている以上は事実誤認による控訴ができる、という考え方と、予備的とはいえ求めた訴因が認定された以上は事実誤認による控訴はできない、という考え方があり得ます。私の記憶では、実務的には前者の考え方ではないか、と思いますが、検察庁としては、あくまで、命令があったが故の不本意な予備的訴因追加であり、控訴できなくなる、ということはおかしい、ということを注意的に明らかにしておきたかったのでしょう。
おそらく、意見書では、検察庁としてはあくまで当初の訴因通りの判決を求めるが、上級審の判断が仰げる状態も維持しつつ無罪判決は避けるという観点から予備的訴因の追加で応じた、ということを明らかにしたものと推測されます。次席検事は正確に説明したはずですが、上記の記事を書いた記者は、必ずしも正確に理解できず、やや不正確、曖昧な記事になっている、という印象を受けます。
検察庁としては、予備的訴因のほうが認定されても、そのまま鵜呑みにして控訴せず確定させる、という対応ではなく、控訴へ向けて検討する、という態勢にあるものと思われます。