http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071014-00000111-yom-soci
問題の本の著者に対し秘密を漏らした、という容疑のようですが、著者側(立件は未定のようですが)の刑事責任は、なかなか興味深い問題だと思います。
秘密漏示罪は、構成要件上の限られた主体が、「秘密を漏らした」際に成立する真正身分犯(一定の身分がある者のみに犯罪が成立)であり、漏らす相手方の存在は、そもそも予定されていて、処罰の対象になっていませんから、講学上、相手方は、「必要的共犯」と言われる範疇に入り、通常の関与にとどまる限りは不可罰、というのが法の趣旨なのでしょう。
しかし、通常の関与態様を超える(例えば、執拗に、秘密を漏らすよう働きかけるなど)場合は、犯罪の成立が考えられなくはない、と私は思います。ただ、その場合、共同正犯というのは、やや変であり(秘密を「漏らされる」ことと、共同正犯が両立しないように思います、一種の対向犯でしょうか)、成立するとすれば教唆犯ではないか、と考えます。
ただ、通常の関与態様を超えていたと言えるかどうかは、かなり微妙なものがあり、奈良地検としても、その点の捜査は行っているようですが、今ひとつ踏み切れないでいるのでしょう。
この種の行為の違法性の問題も含め、いろいろな重要な問題点を含む事件です。