警視庁、けんかの韓国人男性を不法在留容疑で誤認逮捕

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061120i313.htm

今月13日未明、東京都新宿区歌舞伎町の路上で、けんかをしていた韓国人男性を新宿署員が同署に任意同行した。泥酔していた男性は旅券を携帯しておらず、生年月日については二つの異なる回答をした。
同署員が同課を通じ、入国履歴を東京入国管理局に照会した際、同課員が、片方の生年月日しか伝えなかったため、東京入管は「入国の事実なし」と回答。さらに、同区内のコインロッカーに保管されていた旅券も、同署員が偽造と思い込み、男性を逮捕した。
その後、東京入管が鑑定したところ、旅券は真正であることが判明。男性が今月、短期滞在の資格で入国したことも確認した。

旅券不携帯で逮捕していれば、「誤認逮捕」ということにはならなかったですね。
私が検事に任官した平成元年当時は、東京地裁の取り扱いとして、旅券不携帯(罰金刑のみ)での逮捕事案については、不法残留容疑が確認された時点で再逮捕することを条件に勾留を認める、という取り扱いが行われていました。10日とか20日の勾留は認めない、ということを前提に、勾留を認めていたということになります。
その後、取り扱いが変わってきて、平成7年から平成8年にかけて、私が東京地検公安部にいて不法残留事案をいろいろ担当していた当時は、旅券不携帯での逮捕事案でも、実質的には不法残留の捜査を遂げるため、不携帯の被疑事実で必要に応じて延長も含め、勾留を認め、その間に、捜査を遂げて処理を決める、ということになっていました。もちろん、不携帯で10日、20日と勾留しておいて、不法残留で再逮捕、といった「蒸し返し」はしない、ということが前提になっていました。
旅券不携帯は、罰金刑しかない「微罪」ですから、逮捕容疑としては、不法在留事実を確認してそれによるのを原則とする、というのが望ましいとは思いますが、事案によっては確認に手間取る場合もあり得るでしょう。逮捕の必要性があることが当然の前提ですが、まず不携帯で逮捕し、不法在留について早急に確認して、万が一容疑が認められなければ速やかに釈放する(誤認逮捕にはならない)という手法も、一つの選択肢として考えておいたほうが良いように思います。