千葉の殺人、次女の元交際相手に監禁容疑で逮捕状

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090719-OYT1T00794.htm

捜査関係者によると、次女は今月4日にも元交際相手に車で連れ出され、10日に愛知県豊田市でコンビニ店に駆け込んで愛知県警に保護された。元交際相手の車のボンネット上には刃渡り約18センチのナイフがあったが、次女は被害届を出さず、2人はそれぞれの身内に引き取られた。次女は翌11日に家族と千葉北署を訪れ、「元交際相手につきまとわれ、愛知県に連れて行かれた」と相談。同署はGPS(全地球測位システム)付きの緊急通報装置を渡し、パトロールを強化した。しかし、18日に次女が連れ去られた後、緊急通報装置は自宅に残されていた。

警察は、この種のトラブルが生じると、「男女間トラブル」として、なかなか事件にしたがらず、当事者間で話し合って解決しろ、などと言って、被害届も受け付けず追い払ってしまうことが多いですね。警察が「被害届が出されなかった」と言う場合は、警察が被害届を受け付けずに追い払った場合も含まれますから注意が必要です。
上記の、前の連れ去りの時点で、せめて銃刀法違反で立件していれば、その後の最悪の結果は回避できた可能性があると思います。むしろ、上記のような大型の刃物を携帯していることが明らかであるのに、逮捕もせずそのまま放置していたということが不思議です。愛知県警の不手際で最悪の結果につながってしまったという側面が、今後、厳しく指摘される可能性が高いでしょう。

追記1:

素人の勘違い的なコメントがあったので、他の人に誤解がないよう補足しておきますが、「禁止刃物の携帯違反で現行犯逮捕が難しいのは普通」ということはなく、銃刀法の刃物携帯違反による現行犯逮捕のケースがかなり多いのは、実務に携わる人であれば常識でしょう。都会の繁華街で職務質問され刃物携帯が判明して現行犯逮捕、といったケースは数限りなくあります。
別件逮捕をどう定義するかという問題がありますが、記事にあるように、「元交際相手の車のボンネット上には刃渡り約18センチのナイフがあった」という事実があって、それを警察官が現認していれば、その事実だけでも、通常、逮捕の理由や必要性が認められる可能性が高く、刑事処分としても、公判請求の可能性もあると考えられます。余罪としての逮捕監禁を抜きにしても、それだけで、十分、逮捕、勾留に値する犯罪でしょうね。ちなみに、こういった携帯事案に、特定の被害者はいませんから、被害届の有無で取り扱いが異なる、ということもありえません(これは法律家でなくてもわかるでしょう)。
最も悪いのは犯人ですが、上記の記事にあるような経緯を見れば、被害者を救えたのは、やはり警察であって、救えなかったことについて批判されるのは当然というのが、おそらく健全な感覚を持った人の考え方ではないかと思います。

追記2:

<千葉女性殺害>愛知県警が1週間前に聴取 事件化せず
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090722-00000057-mai-soci

容疑者の車のボンネット内からはナイフが見つかったが、事情聴取には「一緒に来ただけだ」と主張し、「二度とつきまとわない」と念書を書いたという。県警は「車載工具との見方もできる」として銃刀法違反容疑での立件を見送ったという。

随分と、被疑者の身になって物事が考えられる、人権保障意識が高い警察、のように見えますが、ナイフが「車載工具との見方もできる」というのは、常識的に考えて、かなり珍妙な理屈で(刃渡り約18センチものナイフが、何に使う工具なのか見当もつきませんが)、自らの失態が、その後の重大な結果へとつながったことで、後付けで苦し紛れの理由を持ち出しているように見えますね。
なお、「携帯」については、例えば、

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/hamono/hamono.htm

では、「自宅又は居室以外の場所で刃物を手に持ち、あるいは身体に帯びる等して、これを直ちに使用し得る状態で身辺に置くことをいい、かつ、その状態が多少継続することをいうとされています。」とされ、また、軽犯罪法違反における携帯に関してですが、「刃物等を人目に触れにくくして持ち歩いたり、車内に隠し持ったりすると、隠して携帯していることになる場合があります。」ともされています。
また、

http://www.houterasu.or.jp/k/houteki_trouble/trouble/20080804_1.html

でも、「ここでいう「携帯」とは、実際に身に付けていることをいい、自宅に所持(保管)している場合を含みませんが、外出時の荷物に入れていたり運転している自動車に入れていれば「携帯」にあたります。」とされています。
ボンネット内に置いていたから携帯にはならない、とは軽々しく言えないでしょう。