法令の解釈

世の中には、いろいろな法令がありますが、適用範囲や適用対象等について、解釈が必要なものも少なくありません。法令の解釈だけが法律家の仕事ではありませんが、重要な仕事の中の1つと言ってよいでしょう。法律家と言っても、いろいろな立場がありますが、弁護士が法令の解釈を行う場合、置かれた場面や目的等により、いろいろなスタンスがあると思います。私の場合はどうか、ということを考えてみると、概ね下記のようになるように思います。

1 受任・関係している具体的事件とは無関係に、一定の問題について、法令の解釈を行う場合
① 自分自身の知識、経験に基づいて、こうあるべきだ、この点は疑問だ、といった観点で考える
② 従来の解釈や判例等に照らすと、こういった解釈になるであろう、なる可能性がある、といった観点で考える
2 受任・関係している具体的事件について、問題となっている点について法令の解釈を行う場合
① 従来の解釈や判例等に照らすと、こういった解釈になるであろう、なる可能性がある、といった観点で考え、その結論を前提として、相談への対応や事件処理を行う
② 従来の解釈や判例等に照らした場合に導かれる結論には異論があり、むしろこういった解釈がとられるべきである、という観点で解釈を考える

受任・関係している事件においては、「従来の解釈や判例等に照らすと、こういった解釈になるであろう、なる可能性がある」ということと、「従来の解釈や判例等に照らした場合に導かれる結論には異論があり、むしろこういった解釈がとられるべきである」ということは、分けて考える必要があり、依頼者・相談者に対しても、その点を意識しつつ説明する必要があるでしょう。
受任・関係していない問題については、そこまでの厳密さは要求されないとは思いますが、誤解を招かないような配慮は必要ではないかと思います。
例えば、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20061031#1162230600

を例にとって言うと、インターネット上の記事で話題となっている問題について、私なりにこういう疑問を持っている、ということを書いているもので、上記の1①に該当するものと言えるでしょう。エントリーの中で、過去の事件についても触れ、

著作権侵害についても、そのアナロジーとして考えれば良い、と割り切ってしまうのは簡単ですが(捜査機関はそのように割り切る可能性が高いでしょう)、私は、そう割り切ってしまってよいのか、いまだに疑問を感じており、解消できずにいます。

と書いて、上記の1②についてもそれなりに配慮した書き方をしているつもりです(裁判所の判断までは予測できないため、捜査機関の判断を予測するにとどめていますが)。
本ブログで、特に刑事法関係の解釈についてコメントする場合、共謀罪に関する議論にも現れているように、過剰な取り締まりやそのための拡張解釈等に反対する、疑問を呈する、といった観点で行う場合が増えるという傾向があると思います。私自身、元は検察庁にいましたが、現在は弁護士であり、刑事の分野にある程度の知識や経験がある者として、そういった観点から物事を考え、明らかにすることに意義を感じているという側面があります。
過去の本ブログでのエントリーや、今後のエントリーをご覧いただく際には、以上を参考にしていただければと思います。