検事正の権限

http://www.yabelab.net/blog/2006/10/04-150649.php

を読んでいて思い出しましたが、地方の中小地検では、どういう検事正がいるかによって、雰囲気も、仕事の中身も、全然変わってくるものです。
検事正が自信過剰のワンマンだと(民間でもそういう社長がいる会社は少なくありませんが)、何かにつけて、事件についてあれこれと口出しし、自分の趣味を前面に出して、ああしろこうしろと口うるさく言いますから、主任検察官や、板挟みになる次席検事は、たまったものではありません。逮捕しなくてもよいものを逮捕しろと言ったり、逆に、逮捕すべきものを見合わせろ、ということもあります。検察庁という組織は、検事正の考え方、やり方次第で、他の人々は、皆、検事正の奴隷状態、といった運用も十分可能な、一種の欠陥組織ですから、そういったひどい実例は、掃いて捨てるほどあります(現役の人々は、物言えば唇寒し、ということで、口をつぐんで言わないだけです)。法学部生、法科大学院生や司法修習生向けの、法務省検察庁による「きれい事」説明では、そういった醜い話は、絶対に出てきませんから、要注意です、というのは余談ですが。
もちろん、そういう状態になってしまうと、ろくなことはありませんから、そうならないように、主任検察官や次席検事の意見にも耳を傾け、採り入れるべきところは採り入れて、適正妥当な事件処理を行う、というタイプの検事正もいますが、残念ながら、そういう人は少数派でしょう。
検察庁という組織は、謙虚で地味な人格者、というタイプはあまり出世せず、自信過剰で上へのアピールがうまく、出世のためには下の者の犠牲は厭わない、といったタイプが出世する場合が多いので、上記のような検事正がよく出現する、という側面もあると思います。
これも余談ですが、そういうタイプの検事正、あるいは検事長等が、辞めて弁護士になり、「ヤメ検」として刑事事件を取り扱うと、非常識なことを言ったりやったり、口先だけでたいした仕事もしないのにお金だけたっぷりふんだくったりして、世間のひんしゅくを買い、ヤメ検への悪いイメージを増幅して、私のように真面目にこつこつ、細々とやっている者まで迷惑する、ということになりがちです。
昔、ある地検で、捜査に問題があり、担当検察官が高検検事長(捜査能力が高く非常に高名)に直訴し、すぐに、高検検事長が検事正を「すぐ来い」と呼びだして、慌てた検事正が、車に飛び乗り、何時間かかけて高検へ駆けつけた、という話を聞いたことがありますが、事件によっては、高検がこれくらいのことをして地検への指揮指導を行わないと、取り返しがつかないことになりかねない、という場合もあるのではないかと思います。