法科大学院の講義を終えて

一昨年から、法科大学院で刑事法関係の講義を担当し、今年も、講義、試験とも終了しました。来年以降は、おそらく、講義は担当しない予定で、当分、法科大学院の教壇に立つということはないと思います。不満等が原因、ということではまったくなく、単に業務多忙が理由です。
遺言代わりに、気付いた点を何点か述べると、まず、せっかく法科大学院に在籍している以上、基本書等を徹底的に読み徹底的に考えてほしい、という気がします。司法試験受験予備校が出したテキスト等を読むな、といった硬直化したことは言いませんし、むしろ、そういったものを含め、貪欲に読み、考える、という旺盛な意欲がほしいと思います。私が受験したころは、合格者の絶対数が少なく、受験生の中で抜きん出ないと合格できない、ということが明らかで、本気で合格しようとする人は、死に物狂いで勉強していた、と思います。合格率が低い低いと言っても、2割、3割が合格するという世界に身を置いている人々は、どこか考え方が甘いのではないか、という気がします。
また、実務家を目指す以上、判例というものを重視する癖をつけてほしいと思います。これは、私自身もそうだったので他人事ではありませんが、受験レベルでは、どうしても、問題点について、A説、B説・・・と学説を羅列し、ちなみに判例は・・・といった論法になりがちです。しかし、裁判実務では、問題点について、まず検討すべきは判例であり、その重要性を受験段階から十分認識すべきでしょう。判例金科玉条のように取り扱う必要もなく、批判的に見ることも有用ですが、学説のおまけのような位置づけをしてしまうのはよくないでしょう。
最後に言いたいのは、法科大学院を出て、司法試験に合格し、そして、何がしたいのか、何を目指すのか、という目的意識を明確に持ってほしい、ということです。合格率が2割、3割と言って、浮き足だったり騒いだりしている人が少なくありませんが、時には人の生命すら左右することもある職業につこうとする以上、その程度の難易度で浮き足だったり騒いだりするなど笑止千万でしょう。司法試験合格後の、高い目標を持ち、目的意識を明確に持って合理的かつ地道な勉強を続けることで、初志貫徹に至るというのが、昔も今も変わらない法律学習と言えるでしょう。