鳥取県が初の人権条例 行政判断で加害者公表

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20051012/eve_____sei_____005.shtml

鳥取県のサイトで探したところ、こういう内容のようです。

http://db.pref.tottori.jp/jinkenhp.nsf
(リンクが変ですが、「議員提出議案第1号 鳥取県人権侵害救済推進及び手続に関する条例」というところを探してクリックすると出てきます)

(人権侵害の禁止)
第3条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人種等を理由として行う不当な差別的取扱い又は差別的言動
(2) 特定の者に対して行う虐待
(3) 特定の者に対し、その者の意に反して行う性的な言動又は性的な言動を受けた者の対応によりその者に不利益を与える行為
(4) 特定の者の名誉又は社会的信用を低下させる目的で、その者を公然とひぼうし、若しくは中傷し、又はその者の私生活に関する事実、肖像その他の情報を公然と摘示する行為
(5) 人の依頼を受け、報酬を得て、特定の者が有する人種等の属性に関する情報であって、その者の権利利益を不当に侵害するおそれがあるものを収集する行為
(6) 身体の安全又は生活の平穏が害される不安を覚えさせるような方法により行われる著しく粗野又は乱暴な言動を反復する行為
(7) 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発する目的で、当該不特定多数の者が当該属性を有することを容易に識別することを可能とする情報を公然と摘示する行為
(8) 人種等の共通の属性を有する不特定多数の者に対して当該属性を理由として不当な差別的取扱いをする意思を公然と表示する行為

上記のような行為をやってよいと思う人は、健全な常識をわきまえた人である限り、いないと思いますが、問題は、その認定でしょう。
「人権侵害救済推進委員会」という、正義を体現したような組織ができて、そういった認定も含め行うようですが、どこまで優秀な人材を確保できるかも未知数の上、調査するための強制力もない中で、例えば、「特定の者の名誉又は社会的信用を低下させる目的で、その者を公然とひぼうし、若しくは中傷し、又はその者の私生活に関する事実、肖像その他の情報を公然と摘示する行為」かどうかを、どこまで判断できるのでしょうか?非常に疑問です。
上記の東京新聞の記事では、

弁護士会は「行政機関による人権侵害を引き起こす可能性が極めて高く、憲法違反の恐れがある」との反対声明を発表。有識者の間では、委員会の独立性や表現の自由に対する侵害などを問題視する声が強い。

とありますが、「人権侵害」に名を借り、上記の行政機関を利用することで、特定の人や組織に攻撃を加えるような「悪用」事例が発生する恐れ(それ自体が人権侵害行為)が現実的にあると言えるでしょう。
第3条では、「何人も」となっており、当然、報道機関、宗教団体、労働組合など、ありとあらゆる人や組織が含まれることになります。
一応、

報道の自由に対する配慮)
第31条 この条例の適用に当たっては、報道機関の報道又は取材の自由その他の表現の自由を最大限に尊重し、これを妨げてはならない。

といった規定はありますが、あくまで「注意規定」にとどまり、報道機関が「集団過熱取材」といった行為を鳥取県内で引き起こし、鳥取県民の「人権を侵害」(事実関係が不明でも「人権侵害があった」という申立があれば申立に沿って上記委員会が動く可能性が高いでしょう)すれば、上記の委員会が乗り出してきて、いろいろな関係者を鳥取県まで呼びつけたり、「救済」の名の下にいろいろな措置を講じて各種の負担を負わせたりといった事態が現実に起きる可能性が高いでしょう。
鳥取県で、わざわざこういった条例を作らなければならないほど、人権侵害が頻発しているとは到底思えませんが、こういう条例が現実にできたことについて、問題意識を持った検討が広く行われるべきだと私は思います。