取調べの可視化ー朝日朝刊の記事に関連して

指宿教授も

http://imak.exblog.jp/2273438/

で指摘されていましたが、今日の朝日朝刊の記事を私も読みました。
この問題については、本ブログで何度か取り上げており、また、捜査官として自白を獲得したり、虚偽自白を引き出してしまったりした体験も、何度か紹介したことがあります。興味を持たれた方は、「可視化」「自白」「取調べ」といったキーワードで検索してみてください。
11年5か月ほど検事として、その後5年ほど弁護士として、刑事事件に関わってきましたが、朝日の記事の中で、ある刑事の発言として、

「落とし」の手法は変えようがないし、変えるつもりもない。あくまで恫喝であり、なだめすかしだ。

と紹介されているような取調べが横行している以上、可視化への流れは不可避であり、具体的にどのような方法で導入するか、真相解明のため捜査機関にどのような手段を与えるべきか、といった議論を、今後、建設的な方向で進めるべきではないかと思います。
真相解明の上で、供述証拠(自白を含む)の重要性は今後も変わるはずがなく、取調べの可視化が導入されることにより、獲得が難しくなる供述証拠が出ることは避けられないと思われますから、そういった部分については、ある程度大胆に、刑事免責、司法取引等々の新しい制度導入も真剣に検討すべきだと私は思っています。
昔、ある大先輩の検事(既に退官されました)に聞いた話ですが、あるところの警察へ行って取調べを行い、終えて帰ろうとしたところ、「助けてください・・・」という悲鳴が聞こえ、近くの部屋の前を通りかかると、中でどこかのヤクザ者が2名くらいの警察官に足蹴にされて悲鳴をあげているところだった、ということでした。見て見ぬふりをして帰った、と、その人は言っていましたが、この話の中に、密室における取調べの危険性や、そういった実態に対する検察庁の及び腰が凝縮されていると、今、その話を思い出しながら改めて感じています。