「マス・メディアの表現の自由」(松井茂記)

マス・メディアの表現の自由

欧州滞在中に読み切りました。マス・メディアの表現の自由に対し、日本の現状はあまりにも厳しく冷淡すぎる、もっとマス・メディアの表現の自由が保護されるべきである、という問題意識の下に、現状における問題点が鳥瞰的に検討されていて、参考になりました。
松井教授の問題意識と私の問題意識には類似性があるのですが(しがない弁護士がこういう言い方をしては失礼かもしれませんが)、ただ、読んでいて感じたのは、現状で起きていることは、それなりの背景(一部マスコミのあざとい報道姿勢、青少年を取り巻く各種環境の悪化など)を伴っており、それに対して、憲法の理念とか、表現の自由の重要性、といったことを居丈高に振りかざすだけでは、今ひとつ説得力を出し切れないのではないか、ということでした。
不満、不安を覚えている人々に対し、きちんと具体的で実効性のある対案も出しつつ、議論を進めて行く必要性を感じました。その辺は、我々実務家に課せられた課題なのかもしれません。