弁護士法違反幇助行為を誌面で行う日本経済新聞

今日の日経朝刊の「家計」面で、「敷金トラブル避けるには」というテーマの小さな記事があった。その中で、貸し主との交渉などを有料で請け負ってくれる、という会社が複数紹介されていた。
ところで、弁護士法には、こういう条文がある。

(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

敷金を巡る紛争は、弁護士法でどういう解釈をしても、上記の「法律事務」そのものである。報酬を得ているのだから、報酬を得る目的、も認定できる。「工事費」も含まれている、という業者もあるようであるが、工事と「交渉」が不可分一体となっていれば、少なくとも、弁護士法違反の疑いは生じるはずである。
なお、上記の72条違反には、こういう罰則がある。

(非弁護士との提携等の罪)
第77条 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。
1.第27条(第30条の20において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
2.第28条(第30条の20において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
3.第72条の規定に違反した者
4.第73条の規定に違反した者

この罰則規定は、死文化はしておらず、現在も、時々検挙者、逮捕者が出ている。インターネットの検索で、「弁護士法違反」で検索すると、数々の事件がヒットする。
コンプライアンスとか、社会的責任などを、誌面で高らかに訴える日本経済新聞が、こういった誌面作りを行うのは、いかがなものかと強く疑問に思う。
なお、各弁護士会内には、こういった非弁行為に対応するための専門の委員会が設けられており、悪質な事案に対しては、捜査機関への告発等も行っている。