「塩狩峠」100年…殉職の鉄道員と三浦綾子さんと

http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20090228-OYT1T00026.htm

小説は、1909年(明治42年)2月28日、和寒町の現JR宗谷線塩狩峠で汽車の連結器が外れ、逆走した客車を止めるため、車内にいた長野さんが線路に身を投げて乗客を救った実話をモデルに、生きることの意味を問いかけた作品。

塩狩峠 (新潮文庫)

塩狩峠 (新潮文庫)

記事にあるように、100年前の今日、「塩狩峠」のモデルとなった事故が起きたわけですが、生きることの意味や、生きる中での宗教の位置づけ、「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし」という言葉に現れているキリスト教の精神といったことを考える上で、この事故や作品は、様々な材料を提供しているように思います。

悼む:前警視庁副総監・高石和夫さん=昨年12月17日死去・55歳

http://mainichi.jp/select/person/itamu/news/20090114ddm012070095000c.html

オウム真理教による地下鉄サリン事件が発生した1995年3月20日、高石和夫さんは警察庁公安1課長に就任した。

夫人によると、家庭でもいつもニコニコしていて太陽のような人だったという。朝、1男1女の子供たちをお姫さまのようにそっと抱き上げて目覚めさせる、そんな父でもあった。
昨年春に食道がんが見つかって手術し、8月に退官、治療に専念していた。

就任直後に、警察庁長官狙撃事件も発生し、当時の激務や心労が命を縮める結果になったのかもしれないと感じられるものがありました。
その年の4月1日に、私は名古屋地検から東京地検へ移動して公安部所属となり、公安1課の人々とともにかなり苦労しましたが、それから約14年が経過し、私自身はしがない弁護士にはなり果てたものの何とか生きています。
上記のような情愛の深さ、人間性といったことが、特に公安のような世界に身を置くにあたり、特に必要ではないかという印象も記事を読んで受けました。
ご冥福をお祈りしたいと思います。

【裁判員制度元年】状況証拠評価、実刑に 東京地裁 最後の模擬裁判

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090228-00000103-san-soci

被告が、居酒屋で一緒に飲んだ同僚の男性と店を出た後、路上で男性に暴行を加えて死なせたという設定。弁護側は「被告が男性と一緒に行動していない『空白』の時間帯があり、第三者の犯行の可能性がある」と無罪を主張した。
「疑わしきは罰せず」とする推定無罪の原則の線引きをどう判断するかで、有罪か無罪かが紙一重。同じ条件の模擬裁判はこれまで、全国の地裁で36回行われ、有罪20件、無罪16件と判断が割れていた。
27日の評議では、無罪を主張する被告の供述の信用性が低いと判断され、8人が有罪を支持。無罪支持は1人のみだった。

終了後、裁判員役の主婦は「夫を亡くした被害者の立場に身を置いて考えた。スッキリした」と満足げに話した。一方、別の女性は「ずっと無罪だと考え、無罪に手を挙げようと思ったが、周囲の雰囲気に流され、有罪にした」と話した。

証拠構造がよくわかりませんが、「被告人の供述の信用性が低い」ということを、状況証拠の一つとして重視したということでしょうか。この論法であれば、有名なロス疑惑も有罪になったかもしれませんが、刑事裁判としてそれで良いのか、一種の「印象論」に陥って、結局、証拠に基づかない判断になってしまっているのではないかという危険性を感じるものがあります。それは、上記の記事にある「スッキリした」人のコメントにも感じます。江戸時代のお白州のような感覚で、目の前にいる人が犯人であるという強烈な予断にとらわれているのではないでしょうか。
これは模擬裁判ですが、実際の裁判になったら、「周囲の雰囲気に流され、有罪にした」人がいるため無罪が有罪になるという、目を覆いたくなるような現実が発生するということは容易に予想でき、刑事裁判がギャンブル化するのではないか、という危惧をますます感じるものがあります。劇場化、裁判ショー化もするようなので、刑事カジノにおけるギャンブル裁判、というところでしょうか。

全国付添人経験交流集会(旭川)

昨夜も午後11時ころまで仕事をしていて、朝、起きられるかどうか不安がありましたが、何とか起きて羽田空港へ行き、JAL旭川行きへ乗り込みました。搭乗直前に具合が悪くなって搭乗できなくなった乗客の荷物を降ろしているとかで、出発が遅れ、着いた旭川も一面の銀世界で、乗ったバスもそれほどスピードが出ず、午後1時過ぎに、何とか会場のホテルにたどり着きました。
冒頭の挨拶の後、私と同期(41期)・同クラスの横山巌弁護士による、「家裁裁判官から見た付添人活動ー付添人に期待すること〜自らの若干の付添人活動経験も踏まえて〜」というテーマの講演が始まったところです。写真は、講演する横山弁護士と会場の様子です(iphoneで撮影)。
同弁護士については、昨年4月に、本ブログで

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080418#1208522635

とコメントしたことがありますが、準強制わいせつ事件で起訴された裁判官も私と司法修習同期、先ほど会場でお会いした元裁判官の中村元弥弁護士(旭川弁護士会

http://www.dobenren.org/html/aisatu/0503nakamura.html

も同期で、人生いろいろということを感じさせるものがあります。

「信じがたい嫌疑受けた」 村井知事

http://mytown.asahi.com/nagano/news.php?k_id=21000000902270001

自殺した県参事・右近謙一さん(59)が、準大手ゼネコン「西松建設」(東京)の裏金事件を巡り、東京地検特捜部から参考人として事情聴取を受けていたことなどに絡み、村井仁知事は26日、県議会本会議で「信じがたい嫌疑を受けた。どうやったら疑念を晴らすことができるか本当に苦しんでいる」と述べ、自身の関与を改めて否定した。

村井知事は、元国家公安委員長で、警察庁が主催する会議に出席した際に、そこへオブザーバー的に参加していた村井委員長(当時)の話を聞いたことがあります。怪しげな、卑しげな人物が多い政治家としては、しっかりとした人格、識見を感じさせるものがあり、印象は悪くなかったことが思い出されます。
しかしながら、政治の世界は、一種の魔界であり、金なしではやって行けないことから、元々は志が高く高潔な人物が、心ならずも陥穽に落ちて行くことは少なくありません。また、この種の事件の中で、金の使い道を追及された者が、苦し紛れにとんでもない虚偽供述をする場合もあって、亡くなった方が、特捜部の事情聴取を受けたから、即、黒色、灰色とも言えません。
真相は藪の中ですが、民主的な国家において、主権者である国民の負託を受けた捜査機関がその権限を行使するにあたり、捜査対象者に自殺者、自殺未遂者を出すということは、それ自体、極めて深刻な事態であり、単に冥福を祈れば済むことではない、ということは間違いないでしょう。

こんなのあり?偽造の「日本」ナンバー押収…熊本

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090228-00000492-yom-soci

給油所から金品を盗んだ疑いで熊本県警などが逮捕した2人組の男が、厚紙とプラスチックでナンバープレートを偽造し逃走用の車両に取り付けていたことがわかった。
県警は「日本123 あ 01−23」と表示した偽造プレートを1枚押収した。

これは、あまりにも稚拙な偽造ですが、本物のナンバープレートを盗んで数字等に細工し、盗難車に取り付けて犯罪に使う、ということは、かなり行われているのではないかと思います。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070406#1175817828

でちょっと触れたことがありますが、私は、以前、当時に住んでいたマンション前の駐車場にとめていた車のナンバープレートを、2枚とも、何者かに盗まれて警察に被害届を出したことがありました。ナンバープレートを盗まれた、情けない様子の車を見て愕然としたことは今でも思い出されます。新しいナンバープレートの交付を受けに行ったり、忙しい中に面倒な思いをして、随分と迷惑しましたが、とんでもないテロ事件とか、残虐極まりない殺人事件等に、盗まれたナンバープレートが使われると嫌だなと思った記憶もあります。幸いにして、今のところ、盗まれたナンバープレートがそういった犯罪に使われたということはないようですが。
ちなみに、被害にあった後、オートバックスへ行って、ナンバープレートを固定する専用のネジ(セットになったドライバーでしか取り外せない)を買ってきて、新しい
ナンバープレートを固定して、その後は被害にあうことなく現在に至っています。

新潮、元大使館職員に謝罪・訂正せず 朝日襲撃手記問題

http://www.asahi.com/national/update/0227/OSK200902270092.html

男性が受け取った週刊新潮編集長名の文書には「男性の記述については十分な配慮をしたつもりだ。本人と特定されないよう仮名にし、写真にはモザイクをかけて掲載した」などと記されていたが、記事の真偽についての説明はなかった。

旭川へ来る途中のJAL機内で、今週の新聞で読んでいないものを読みながら整理していましたが、朝日新聞の朝刊で上記の問題を特集していて、じっくりと読んでみました。
あくまで報道であり、捜査報告書等とは同列に論じられないものの、告白者が犯人であればきちんと語るべきところが、客観状況に矛盾して語られているところが1つや2つどころではなくあって、捜査機関がまったく問題にしていないことが理解できる気がしました。
よく、テレビドラマで、「事実に基づくフィクションです」といった表示が出ることがありますが、元の記事については、「事実にヒントを得たフィクション」という位置づけで捉えておいたようが良さそうです。そうではなく、これはノンフィクションで真実である、というのであれば、少なくとも、朝日朝刊の上記の記事で様々に指摘されている疑問点、矛盾点について、きちんと反論され合理的な根拠が示されなければならないでしょう。

強姦被告、GPS携帯で居場所通知誓約…情状認め猶予刑に

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090228-OYT1T00526.htm?from=top

男は昨年5月、音楽イベントで知り合った女性(19)を自宅に連れ込み、乱暴しようと顔を床に打ち付けるなどしたとして起訴された。同年12月の初公判では起訴事実を認め、被告人質問で「今後は近づかない」と言明したが、その後の示談交渉で女性から「その言葉を証明するため、居場所を確認できるようにしてほしい」と、GPS機能付き電話の携帯を求められた。
これを受け、弁護人は最終弁論などで、男が料金を負担して携帯電話会社などの位置情報サービスを利用し、女性が携帯電話やパソコンから居場所を調べられるようにすることを表明。同地裁は今月2日、「身勝手極まりない」としながら、懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑・懲役5年)の判決を言い渡し、確定した。

記事を読む限り、強姦自体は未遂であったのではないかと思われ、また、致傷の程度もそれほど重くはなく、示談も成立しているのではないかと思われます。そういった事案であっても、強姦致傷事件というのは、法定刑も重く、実刑に処せられる場合もあり、裁判所が実刑か執行猶予かを検討する中で、上記の記事で紹介されているような事情がそれなりの重みを持ってきて、執行猶予判決へと結びつく上で大きく貢献した可能性はあるでしょう。
ただ、どういう形で約束したかは不明ですが(私が被害者側であれば、公正証書化し、かつ、違反した場合の違約金に関する条項も入れるでしょう)、あくまで示談等の中での約束ですから、いかにして実効性を担保するかという問題は残ります。とはいえ、この種の事件における再犯防止策として、活用の余地はかなりありそうです。