年末と刑事事件

年末で、今年も残り数日ですが、検察庁では、年末になると、「未済事件の処理」を励行するよう求められます。
身柄事件を処分保留のまま釈放し処分を決めないままになっていたり(こういうものを「釈放未済」と言い、できるだけ早期に処理すべきとされますが、なかなか処理できずに残っていることも少なくありません)、身柄事件の捜査に追われて在宅事件(身柄不拘束の事件)が処理できないまま残っていると、そういった「未済」事件を、年末を機に処理するよう求められるわけです。
現在の検察庁が、どのような方針、運用かはわかりませんが、私が現職の頃は、年末に、未済事件を、「検事は一ケタ、副検事はゼロ」にするように、などと言われていました。検事の場合は、複雑困難な告訴事件を抱えていたりしますから、なかなかゼロにはできないのが実状でしょう。
こういう状況ですから、この時期の検察庁内部は、人や事件記録が右往左往しており、騒然としています。そういう中で、懸案の刑事事件も、この時期にバタバタと処分が決まる、ということになりがちです。
私が弁護人になっている刑事事件でも、昨日、罰金刑になったものがありますし(逮捕必至という状態で依頼があり、捜査機関に働きかけて何とか在宅にしてもらうことができ、処分も公判請求までには至らず、ほっとしました)、また、先日、このブログで「逃げ回る検事」ということで紹介した事件(勾留請求されたが却下になり釈放)についても、年内処理の可能性があって、状況を注意深く見守っているところです。
やはり、出るべき処分は出した上で、心新たに新年を迎えたい、というのが、関係者の心情でしょう。

借金返済期限の30分前、家政婦を強殺…元ロッテ投手

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20041222-00000314-yom-soci

11月18日午後6時半ごろ、西内さんが住み込みで働く産業廃棄物処理会社会長方を訪れ、西内さんに土下座して借金を頼んだ。しかし、断られたため逆上し、西内さんに襲いかかった。西内さんを桶川市内の旧荒川に投げ入れて殺害した直後、上尾市内のヤミ金会社に直行。奪った175万円のうち一部十数万円を借金返済に充てたという。

相当追いつめられていたようです。そこまで追いつめられていたこと自体が、本人の責任でしょう。

検察側、控訴の方針 自衛隊イラク派遣反対ビラ訴訟

http://www.asahi.com/national/update/1223/007.html

起訴価値には疑問があっても、起訴して無罪になってしまえば(特にあのような理由で)、検察庁としては、今後の同種事例の処理上、多大な障害になると判断しているはずですから、控訴は必至でしょう。
高裁の場合、どうしても治安、社会秩序重視という傾向が強く出ますから、可罰的違法性を否定した先日の判決が、高裁で破棄される可能性は高いと私は見ています。
ただ、最終的に有罪になっても、起訴価値の乏しい事件を無謀にも起訴し、関係者に多大な迷惑、負担をかけ、世間を騒がせ、検察の威信を低下させた、ということは、永遠に汚点として残るでしょう。
刑事罰というものは、人の生活、人生に多大な影響を及ぼすもので、そうである以上、謙抑的に運用、発動されなければならないということを考えてもらいたいものです。

自衛隊イラク派遣反対ビラ訴訟の判決文を読んでみて

コメント欄で紹介してもらった

http://homepage2.nifty.com/osawa-yutaka/heiwa-iraku-dannatu-hanketu.htm

を一通り読んでみました。
特徴として指摘できるのは、

1 住居「侵入」かどうかについては、従来の判例・通説に従い、管理者の意思に反した立ち入り行為であるとして、構成要件該当性を肯定していること(手堅い判断だと思います)
2 違法性(可罰的違法性)について、本件の具体的事情をきめ細かく検討する方法により、結論として否定していること
3 ただし、違法性については、あくまで本件で現れた事情に基づくものであり、同種行為が違法性を帯び有罪となる可能性を否定していないこと

といったところでしょう。
上記2については、被告人らが所属するグループが、長年、同種の活動を継続していたにもかかわらず、警告等も受けることなく放置されてきたことや、配布したビラの内容や配布態様も特に問題のあるようなものではなかったことなど、検討内容について、特に違和感を感じるようなものではありませんでした。
これが、「落合弁護士は弁護士辞めろ!というビラを自宅私有地に立ち入って玄関ポストに毎日撒かれる」といった執拗かつ過激な(?)行為であれば、裁判所の結論も違ったかもしれませんが、居住者の中の特定の人を狙ったわけでも、連日行っていたものでもないし、内容を見ても、どこにでもあるようなビラですからね。どういう証拠関係になっているかわかりませんが、この程度のビラのポスティングで、居住者が「不安でおびえて」いたとも到底思えません。
上記3について、判決文では、

 ② この点,検察官は,本件各立ち入り行為が刑事処罰の対象とならないならば,居住者や管理者は,被告人らの立ち入りを受忍しなければならなくなり,また,ビラ投函を隠れ簑とした不当な目的による立ち入りに対しても排除する手段を持ち得なくなり,かかる結論は不当であると主張する。
 だが,前述のとおり,被告人らが居住者や管理者の反対を押し切ってビラを投函する意図は有していなかったと思料されることからすれば,テント村に対して正式に抗議の申し入れをすることによって,敷地内に立ち入ってビラを投函することを止めさせることは可能であったと考えられる。そのような申し入れによって,居住者や管理者が敷地内への立ち入りを強く拒否していることが明らかになっても,立ち入りを続けた場合,あるいはビラの内容が脅迫的なものになったり,投函の頻度が著しく増える,立ち入りの際に居住者との面会を求めるなど,立ち入りの態様が立川宿舎の正常な管理及びその居住者の日常生活に悪影響をおよぼすようになった場合には,立ち入り行為の違法性が増し,刑事責任を問うべき場合も出てくると思料される。 また,不当な目的を秘した立ち入りを排除できないとの点については,必ずしもビラ投函を仮装する場合に限定される問題ではなく,他方,ビラ投函を仮装したものであるか否かは,従前のものも含めた立ち入り行為の態様,立ち入った者が所属している組織の性格等から,ある程度合理的に推認することができると考えられる。
 よって,検察官の主張には理由がない。

とされており、本件でも、管理者や警察が、立件の前に、きちんとした手順を踏んで警告を発し、それにもかかわらず侵入してきた、といった経緯があれば、結論は変わった可能性があると思います。なぜ、そういった警告をせず、いきなり逮捕したりするのか、については、これ以上言うまでもないでしょう。
私も、公務員宿舎には、通算で8年ほど住みましたが、ありとあらゆる人がどんどん「侵入」してきているのが実態です。押し売り、宗教その他の各種勧誘、犬を連れて散歩している人、宅配の人など、様々です。中には、休日に玄関先でチャイムを鳴らしてしつこく立ち去らないような人間もいますが、そういうものに較べれば、黙々と郵便受けにポスティングするだけという、本件の被告人の行為は、それほど迷惑なものではない、というのが個人的な感想です。正に「法益侵害の程度は極めて軽微」でしょう。もっと迷惑なことをしている者が誰も捕まっていないのに、本件の被告人が一種の狙い撃ちのような形で捕まり、しかも起訴されて、といった経緯を見たとき、これは、真の起訴価値があって有罪になるのが当然だ、とは非常に考えにくいでしょう。
裁判官も、普通は公務員宿舎に住んでいて、判決文に書いてあるような実態は、身をもって感じているはずでから、本件の被告人の行為について、可罰的違法性を認められなかった、というのは、わかる気がします。

高級ホテル忘年会、37人食中毒…調理部門を営業停止

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20041223i311.htm

リッツ・カールトン大阪らしからぬ大失態ですね。24日から3日間の営業停止ということですが、クリスマスのこの時期、影響は大きいでしょう。

追記:

先ほど、リッツ・カールトン大阪に電話して聞いてみたところ、営業停止の対象は、宴会部門の一部で、その他は通常通り営業しているそうです(電話に出た女性は、泣きそうな感じで謝っていました)。