そして、メディアは日本を戦争に導いた

昨年、出てすぐに買って、半分くらい読んだのですが、そのままになっていたので、この連休中に最後まで読み通しました。戦前、戦中に、日本のマスコミが、日本は戦うしかないと声高に喧伝し煽りに煽っていたことや、その中でも、大勢に抗して日本が誤った道へ進まないように努力していたごく一部のジャーナリストがいたことが、博識な2人の対談形式で具体的に語られていて、今の日本の現状と重ね合わせつつ、興味深く読むことができました。
結局、マスコミというものも、その国の国民のレベルに応じたものにしかならないのだろう、という気が、この本を読んで、改めてします。特に、言論の自由が保障されているような国ではそうでしょう。その点、戦前、戦中、特に昭和に入ってからの日本は、言論の自由への制約が強い国でした。しかし、では、戦争へ戦争へと国民を駆り立て煽ったマスコミがそういった制約の犠牲者かと言われれば、そうではない、と私も思いますし、この本の題の「導いた」という点にも、著者らの同じ気持ちが込められていると感じます。導かれたというと、導かれた側が犠牲者風になりますが、当時の国民の意識、風潮が、当時のマスコミ論調をしっかりと支えていたところに、きちんと目を向けておく必要があると思いますし、それは今へと通じる教訓にもなるでしょう。
耳触りの良い政治家、マスコミの言葉に踊らされるのは心地良くても、では、それが真の意味で国民の利益を損なわず増進することになるとは限りません。やはり、自らの理性、感性を働かせ主体的に判断して正否を見極めるという態度で臨まなければ、我々は、再び「いつか来た道」を歩んでいるということになりかねない、ということだと、しみじみと感じています。