枢密院 近代日本の「奥の院」

 

明治憲法における枢密院は、明治、大正、そして昭和の敗戦までの歴史書を読んでいると随所に登場しますが、どういう役割を果たしていたのかが見えない印象が強く、この本があったので読んで(正確にはオーディブルで聴いて)みました。

著者は、枢密院議事録を丹念に当たって、その動きを時系列的に紹介していて、枢密院が何をやっていたかはかなり理解できましたが、では、日本の政治上、どういう役割を果たしていたかについては、今一つ見えてこなかったというのが通読した後の印象です。

伊藤博文が構想していたように、天皇と政府の間に立ち天皇大権の行使を適正ならしめるという機能を発揮していたようにも見えず、では無用の長物であったかというと、枢密顧問官の発言の中にはかなり的確に政府の姿勢や政策の問題点を指摘するものもあって、民意とは別のところで一定の機能は果たしていたようにも感じられます。そういう曖昧さ、わかりにくさは、屋上屋を架するような存在であったという批判にもつながるのでしょう。

丹念に枢密院の歴史、動きを辿った本書を読んだことで、今後、枢密院が登場する場面を読んだ際に、その背景へと目を向ける厚みが、自分の中で形成されたように感じられるのは収穫だったと思います。自分にとって、読んでおくべき本であり読んで良かったと感じています。