「松岡洋右と日米開戦:大衆政治家の功と罪」

 

日米開戦直前まで外務大臣であった松岡洋右は、日独伊三国同盟を成立させるなど日本の進路を決定づける上で大きな影響を及ぼした人物ですが、その松岡洋右に焦点を当てた本書を、最近、通読しました。

1940年以降、1941年の日米開戦にかけての、日独伊三国同盟締結や、北進、南進を巡る当時の政府内、軍部の動きは、いろいろと本を読んでいてもわかりにくいものがありますが、著者はかなり資料に当たったようで、その辺の動きについて丹念に書き込まれていて、紆余曲折にはやや辟易するようなものもありましたが、動きがかなり理解できました。

著者は、北進、南進を巡る動きの中で、松岡洋右が、南進すれば英米との戦争が不可避であると軍部に抵抗した、そのあたりをかなり高く評価しているようなのですが、そもそも、日独伊三国同盟を成立させ、英米との対決を不可避にした上、頼みのドイツに梯子を外されたような状態に陥らせた、「大局」において決定的に誤った松岡洋右が、北進、南進を巡る動きの中で、小局的に光るものを見せていたとしても、それは大きく評価できず、むしろ罪のほうが圧倒的に大きいのではないかと、読んでいて素朴に感じるものがありました。

松岡洋右のような、国民に大きな人気を有するポピュリストが、独自の考え方で国策を強引に押し進め国を大きく誤らせてしまうといった事態は今後も起こり得ます。そうならないためにも、松岡洋右の生涯、軌跡には、反面教師的に学ぶところが多いと言えるように思いました。