裁判で国に「盗聴」疑惑! 退席中も原告と裁判所の会話を録音、「前代未聞」と弁護士が抗議(弁護士ドットコムニュース) - Yahoo!ニュース
原告側代理人の笠置裕亮弁護士によると、録音機は国側の指定代理人のひとりが開けたままにしていた書類ファイルの下に置かれていたという。国側の退席後、笠置弁護士がファイルの表紙に橙色の点滅が反射していることに気づき、録音が発覚した。 裁判官の問いかけに対し、国側は「うっかり」を強調したが、実際に裁判所がデータを確認したところ、少なくとも2022年7月以降の期日が録音されていたことがわかったという。
弁論準備手続の際には、原告(代理人)、被告(代理人)が交互に呼び入れられ、その際には、相手方(代理人)には言えないが裁判官には言っておく、といった性質の事柄が結構、話されるものです。
例えば、和解の話が進行していて、具体的な金額が出ている場合に、被告としてはここまでは出せるとか、原告としてはこれより下は譲れないとか、裁判官には言っておくが相手方には知られたくない手の内を、個別の話の際に打ち明けるといったことはよくあることです。
私が、上記の件で特に悪質だと感じるのは、自分が退席した後の、相手方代理人と裁判官の会話を隠し撮りしていた点で、そういう隠し撮りで相手方の手の内がわかれば、進行を有利に進められる蓋然性が高まりますから、それだけに、相手方の代理人が激怒しているのもよくわかります。
こういった悪質な行為に対して制裁は加えられないかと思ったところ、「法廷の秩序維持に関する法律」では、第2条で、「裁判の威信を著しく害した者」に、20日以下の監置、3万円以下の過料、それらの併科が制裁として用意されており、裁判の威信を著しく害する行為とは何かについて、なかなか定義が見当たらないのですが、法務省の資料を見ると、
では、
ウェブ会議等や電話会議を用いて手続を行う期日においては、写真の撮影、録音、 録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うこと なく伝達する行為が生ずるおそれがあり、例えば、ウェブ会議中のディスプレイの スクリーンショットを撮影する行為、ウェブ会議の様子を録画をせずにインターネ ットを通じて配信する行為をした場合において、裁判所の職務の執行を妨害し、若 しくは裁判所の威信を著しく害したものと認められるときは、過料等の制裁を課す べきとも考えられる。
という記載があり、そこから考えると、本件のような、弁論準備期日における悪質な隠し撮り行為について、裁判の威信を著しく害したものとして(裁判の威信を著しく害していると私は思いますが)、監置等の処分が科される余地はあると見るべきでしょう。
このような悪質な行為に対して、裁判所としても、監置等の処分を含む厳正な対応で臨むべきだと私は思います。