「長篠合戦と武田勝頼」

 

長篠合戦と武田勝頼 (敗者の日本史)

長篠合戦と武田勝頼 (敗者の日本史)

  • 作者:平山 優
  • 発売日: 2014/01/21
  • メディア: 単行本
 

 今年最初の本格的な読書としてこれを読みました。かなりの読み応えで、新年スタートの1冊として上々でした。

長篠合戦へ至る経緯は、どのような歴史書(一般向けのもの)でも、割とさらっと流して書かれがちですが、本書では丹念に紹介されていて、当時の武田、徳川、織田や、上杉、北条といった諸家の動きや武田勝頼長篠城を攻略しようとした流れがよく理解できました。

諏訪氏の後継になるはずであった武田勝頼の権力基盤の弱さや家臣との軋轢も、本書では紹介されていて、長篠合戦を考える上で見逃せない重要な背景であると感じました。

著者の、長篠合戦の通説への疑問や、疑問を挟む様々な考え方への疑問、著者なりの長篠合戦像にも、納得できるものがありました。武田軍が、無謀な騎馬武者による突撃を繰り返したことで壊滅したとする見方を著者は否定しますが、確かに、攻勢に出て騎馬により突撃することで敵を圧倒しようとするのは、正攻法としてあり得る戦法であり、武田軍の敗因は、徳川・織田連合軍の火力の優越や武田側の兵力の劣勢によると見るべきでしょう。

武田勝頼の、長篠城包囲を解いて徳川・織田連合軍に決戦を挑むという決断が敗北を招いたわけですが、敵の勢力への見方が甘かったという批判は十分に成り立つものの、武田勝頼の決断は、当時の状況下での戦国武将のそれとしては十分にあり得るものであったと感じるものがあります。

本書で読んだものをベースとしつつ、長篠合戦やその前後の動きについて、さらに学んでいきたいと考えています。