「明智光秀・秀満:ときハ今あめが下しる五月哉(ミネルヴァ日本評伝選196)」

 

 大河ドラマ麒麟がくる」の時代考証担当である小和田教授の著書であり、買った後、中身が濃さそうでなかなか手につかずにいたのですが、明智光秀関連本を何冊か読んだので、意を決して読み始め、通読しました。

ボリュームあるだけあり、細かい論点についても丁寧に書き込まれていて、今まで読んだものの確認にもなり、また、知らなかった知識も得られて、大変参考になりました。小和田説に立つかどうかはともかく、この分野において、きっちりと読んでおくべき一冊だと思いました。

本書にあるように、最近は、本能寺の変当時の織田信長と朝廷との関係が良好だったとして、朝廷黒幕説とか朝廷を蔑ろにする織田信長を排除するために明智光秀が立ち上がったとする説(「信長非道阻止」の「非道」の中に朝廷への対応を含める)は影が薄くなりつつあります。ただ、朝廷が、表面上、織田信長と同調していたからといって「面従腹背」ということもあるわけで、中世的な権威(朝廷、足利幕府)を重視したい明智光秀が、そういった腹背の部分と通じつつ、あるいは忖度して本能寺の変に及んだということは、十分にあり得ることでしょう。

私はかつて、

明智光秀 つくられた「謀反人」 (PHP新書)
 

 を読んだ時から、信長非道阻止説に立つ小和田教授の見解に大いに惹かれるものを感じていて、今回、本書を読んで改めて強く共感を覚えるものがありました。

今後、大河ドラマで、本能寺の変へと進み行く明智光秀がどのように描かれるのか、楽しみです。