東京高検の黒川検事長の定年延長問題 検事正の乱「国民からの信頼が損なわれる」〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
神村氏と司法修習が同期の元東京地検検事、落合洋司弁護士はこう話す。
「神村氏は昔からすごく真面目で正義感が強い。黒川氏の定年延長は、めちゃくちゃですよ。検察内部でも定年延長を批判する意見を言う人は多々います。今回の検察長官会同で、黒川氏批判の意見を述べたことは、神村氏らしい。黙ってられなかったのだと思いました。神村氏の言ったように、検察の信頼が失われているのは事実ですよ。そういう意見に検察は耳を傾けてほしいと思いますね。それと同時に、意見した神村氏が左遷されたりしないようにと願うばかりです」
神村氏とは、検事任官後、1年間、東京地検で一緒に新任検事をやり、私は新任明けで徳島地検へ行き、彼は、確か釧路地検帯広支部へ行ったと記憶しています。なぜか覚えているのは、もらった年賀状に、雪の世界です、とか書いてあって、プリントゴッコか何かで作った絵が、ロールシャッハテストみたいな感じで(失敗作だったのかもしれません、笑)、寒いところにいるんだなー、と感じたことが思い出されます。
その後、ちょこちょこと会うことはありましたが、神村氏が法務省の要職に就いたり、甲府地検の検事正へ行ったりしている一方、こちらはしがない弁護士ですから、ここ数年は会う機会がなくなっていたところ、今回の事態で、最初、聞いたときは驚きました。驚きましたが、昔から、印象としては、物事を真面目に考え真面目に取り組む人という感じで、検事らしい正義感の持ち主という印象もあって、発言したことには彼らしいと思いましたし、人を出し抜いて前へ前へと出ようという性格でもなく、そういう神村氏がそういった発言をしたのは、よくよく考えての行動だったのではないかという印象を持ちました。
国家公務員法の定年延長規定は、特殊技能の持ち主など、延長しなければ業務自体に多大な支障を来すような事態が想定されていると思われ、検察幹部で認証官になるような能力のある人々が常に複数いる状態で、特定の認証官の定年延長までする必要がある事態は想定できませんし、政府が強弁している国家公務員法の解釈にも、多くの人々が指摘しているように深刻な疑問があります。安倍政権、官邸のコントロールできる「権力の門番」「権力の番犬」のような人物を検事総長に据えて検察を支配するための恣意的な人事と言われても仕方がないでしょう。
検察は、権力内にありながら反権力で動くこと(特に政界捜査)が求められる、特殊な組織であり、そこに、国民の信頼が寄せられている面があります。検察庁法上、具体的な事件については、法務大臣は検事総長しか指揮できず、国民主権に基づく民主的統制と不偏不党の事件処理が、そういった微妙なバランスにおいて保たれる仕組みになっています。権力の門番、番犬のような人物が、定年延長までされて検事総長の椅子に座れば、従来のバランスは崩れ、国民の検察に対する信頼も根底から覆りかねません。その意味で、戦後の検察の歴史上、由々しき事態を迎えつつあり、神村氏の発言には重い意味があると私も思います。