沈みゆく帝国 スティーブ・ジョブズ亡きあと、アップルは偉大な企業でいられるのか
- 作者: ケイン岩谷ゆかり,外村仁(解説),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/06/18
- メディア: 単行本
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昨年半ばくらいに、この本について、アップルのティム・クックCEOが批判している、というニュースも流れていて、おもしろそうなのでKindleで買っていたのですが、忙しくて読めずにいたのを、年明け後に少しずつ読み、やっと読み終えました。もっと、さらっと読めるのではないかと思っていたのですが、なかなか濃い内容で、思った以上に時間がかかりましたが、読み応えがありましたね。
スティーブ・ジョブズ健在の頃から病気で徐々にフェイドアウトしていく過程、ジョブズ逝去後のティム・クックを後継者とするアップルの動き、様々な問題にどのように対応してきたかが、赤裸々に描かれていて、綿密な取材が行われたことが窺われましたし、まずファクトで語るという叙述には好感が持てました。訳も読みやすく良いと思いました。
読み終えて感じたのは、著者が最後で述べているほど、私自身はアップルの今後が暗いとは思いませんし、最近の好業績やエクセレントな企業であるアップル(特にティム・クックの経営者としての優秀さはこの本を読んでいて強く感じました)が、当面、他の企業より抜きん出た存在としてリードすることになるだろうと感じつつも、やはり、よく指摘されているように、不世出の天才であったジョブズを失ったアップルは、画期的なイノベーションを打ち出せなくなっており、このままでは徐々に行き詰まる方向へ進むのではないかという予感がしてなりません。著者は、日本での勤務当時にソニーを担当していたとのことですが、著者も、かつてはウォークマンなど独創的な商品を世に出していたソニーが、天才的な創業者亡き後、徐々に衰退して現在に至っている姿と今後のアップルの姿をオーバーラップさせていたのではないかと推測されますし、それは私も同様です。
経営としては盤石なアップルが、今後、いかにジョブズのような天才的な才能を見出して驚異的なイノベーションを生み出せるかが、著者のネガティブな予想を打ち消し裏切ることができるかどうかにつながると私は思いました。