- 作者: 半藤一利,保阪正康
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2014/02/20
- メディア: 単行本
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私もかつてはそうだったのですが、戦後の日本では、戦前・戦中について「陸軍悪玉・海軍善玉」論をがかなり幅をきかせてきた面があり、今でもそういう印象を抱いている人は少なくないと思います。
しかし、実際はどうだったのか?といったことを、比較的最近に財団法人水交会から刊行され、私も入手した(まだ少ししか読めていませんが)、
帝国海軍 提督達の遺稿 小柳資料
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100426#1272274898
を読み解きながら総点検しようというのが本書で、上記資料中の様々な回顧談の背景にあるものや信憑性に疑問がある箇所などを丁寧に紹介しながら対談が行われていて、最近読んだこの分野の本の中では特筆すべき内容であると、通読して感じました。
海軍の中には、米内光政、山本五十六、井上成美など、「善玉」のほうに入れてよい人物がいる一方で、国策の誤りに積極的に荷担した人々も相当数いて、善玉のほうに入れてよい人々も、例えば山本五十六であれば、開戦前に近衛首相に対して継戦能力の限界は告げつつもその後の敗戦が必至であることを明言しなかったなど、振り返れば様々な問題を抱えていて、単純な善玉・悪玉論からの脱却のためには、読みやすくわかりやすい一冊だと思います。
日本が日米開戦へと進んだ経緯やその後の敗色が濃厚になる中でなかなか終戦へ持ち込めず膨大な犠牲者が出た経緯など、単に過去の出来事というだけでなく、今の日本への多大な教訓になるものが含まれていて、こういった実証的な本を読むことを、今後も丹念に積み重ねていくことで、自分なりの歴史観や判断基準を、より強固なものにしたいと、改めて感じました。