元検事 猪瀬知事の説明に唐突感

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131126/k10013355521000.html

東京都の猪瀬知事は、去年の知事選挙の直前に大手医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取った際に書いたとする「借用書」を公表し、個人的な借入金であることを強調しました。
これについて元検事の落合洋司弁護士は、「非常に唐突感があり、十分、合理的な説明とは思いにくい」などと指摘しています。
猪瀬知事の説明について落合弁護士は、「選挙の時期に近いことや、5000万円という非常に大きな資金であることを考えると、個人の貸し借りという主張は非常に唐突感があり、十分、合理的な説明とはなかなか思いにくい。知事が公表した借用書も書き方に法律の定めがあるわけではないが、5000万円の貸し借りをするには簡素に過ぎると思う」と指摘しています。
さらに徳田毅衆議院議員と同席した場で、「選挙にお金がかかる」という話題が出たことについて、「知事が口に出していなくても、選挙でお金が必要だと周りの人が話していて、そのまま否定もせずにいて金を受け取ったのならば、選挙のためにお金が必要だから受け取ったということになってくる。そういった経緯を慎重に見たうえで、本人の認識を認定するしかない。今後、捜査機関によって粛々と捜査が進められ、真相が解明されるのを待つしかないと思う」と話しています。

金、というものは、公選法関係は赤、賄賂は青、その他の政治資金は黄色、といった色がついているわけではありませんから、どういった趣旨の金であったかは、関わった当事者の供述やその当時の状況などを総合的に見て評価する必要があります。その点、問題となっている金については、授受の時期が東京都知事選の直前であり猪瀬氏が徳洲会に選挙の関係で挨拶に行った直後の授受であることから、選挙に関するものではないかという強い疑いが生じるものではあるでしょう。この時期に、いきなり、純然たる個人への貸金として5000万円という、家一軒買えるほどの多額の金が、それも現金で交付されるというのは、いかにも不自然、不合理です。
見逃すべきではないのは、選挙に関する金、という性質と、職務に関する賄賂(そうである、と言っているわけではありませんが)という性質は両立し得るもので排斥しあうものではない、ということです。無利息、無担保で返済期限の定めがないことは、それ自体が「財産上の利益」と評価されうるものであり、過去にそうした貸借が賄賂と認定されたケースは少なくありません。選挙という、何かと物入りな時期であるからこそ、多額の金の提供は受ける側にとってはありがたいこと、それだけに今後への布石として提供されたのではないかという疑いも出てきます。
このように、複数の重大な可能性があり、猪瀬氏の説明だけで済むような状況でもなく、そういった事情を踏まえて、私は、上記のように、「今後、捜査機関によって粛々と捜査が進められ、真相が解明されるのを待つしかないと思う」とコメントしたものでした。