http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121207/trl12120721500006-n1.htm
今年5月に施行3年を迎えた裁判員制度について、最高裁は7日、実施状況を検証した結果、「比較的順調だが、供述調書などの書面による立証が中心で、制度が目指す法廷中心の審理が実現できていない」とする報告書をまとめた。「審理が理解しやすかった」と回答した裁判員経験者の割合が減少していることから、報告書は「運用上の問題がある」と指摘。裁判所、検察、弁護士の法曹三者に改善を求めた。
裁判所は、裁判がちゃっちゃと早く進んで判決が出て事件が終わり、裁判員が文句言わずに帰ってくれればそれが一番かもしれませんが、当事者は、そういうわけには行かないのが辛いところですね。
いつも捜査機関にはネガティブなので、たまには捜査機関の立場でちょっとコメントすると、日本の刑事司法では、捜査時に、綿密、徹底的な捜査が行われ、その結果として書面が多数作成されて、それが公判での立証に使われてきたという経緯があります。刑事訴訟法の証拠に関する規定も、そうした捜査実務を前提に作られている面があります。
裁判員制度が導入されて、スローガンとして、公判でのわかりやすい裁判、ということが言われていても、そういった従来の捜査や立証の在り方、刑事訴訟法の証拠法に関する規定といったことについて、ほとんど手は加えられていないので、そこをおざなりにしておいて、最高裁が「供述調書などの書面による立証が中心で、制度が目指す法廷中心の審理が実現できていない」などとうそぶいているのも、いかにも裁判所が言いそうな自分勝手な言い草ではありますが、いかがなものか、という気はします。
そういう方向で大きく舵を切るのであれば、捜査段階での証拠収集、保全の在り方を、書面から、例えば記録媒体に記録しておく(目撃供述をDVDに録画しておく)といった方法に大きく転換して、かつ(ここが特に重要ですが)、そういった証拠の証拠能力についてもきちんと法令を整備して、法廷へ顕出できるようにしておく必要があります。
そういうことを何もせず(自分でできなければ法務省に働きかけるとか)放置しておいて、何が「供述調書などの書面による立証が中心で、制度が目指す法廷中心の審理が実現できていない」だ、他人が出してきたものを、うまい、まずいと言いながら食っているだけのくせに、というのが率直な感想ですね。