- 作者: 溝口敦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/09/16
- メディア: 新書
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先週後半から、前から患っている痛風の痛みがひどくなり、耐え難い状態になってきたので、今日の午前中、病院へ行ったのですが、前から読みかけていた本書を、待ち時間を利用するなどして一気に読みました。
暴力団、といっても、一般の人は、報道や映画、テレビでイメージを形成していることが、おそらく多く、実態として、どういう人たちが何をやっているのか、意外と知らないことが多いのではないかと思います。著者は、暴力団関係の取材経験が豊富で著書等も多い著名なライターで、豊富な知識、経験に基づき、本書で、暴力団とは何か、どういう人達がどういう活動をしているのか、といったことを、丁寧にわかりやすく説明しています。よくわからない、という人に、格好の入門書になっていると、私は、自分の知識を整理しながら読みつつ、感じました。
私にとって、気になるのは、これだけの集団が、現状のように、警察による猛烈な圧力をかけられ取締りの対象となる中で、今後、どういった方向で流れて行くか、ということです、。著者は、その点について明確な予測はしていませんが、「半グレ集団」といった、元暴走族等で、暴力団には所属しないまま、様々な違法・不当な行為を組織的に行う集団の台頭を指摘しているところを見ると、アンダーグラウンド化、目的に沿った犯罪専門集団化、といった流れをイメージしているようです。
日本人は、名前の通ったもの、大きなものを尊ぶカルチャーを持っていますから(例えば、弁護士でも、一人で細々やっているような弁護士より大事務所で羽振りよくやっているような弁護士が尊ばれます)、広域暴力団、といった存在が、何かと重宝がられるということがまったくなくなるとは思いにくいものがあります。それはそれとして、変容しつつも存続しながら、著者もその傾向を指摘するような、イレギュラーな、専門分化した、グローバルな犯罪集団(インターネットやITを駆使して、というケースが多くなるでしょう)が、今よりも、もっと見えにくくなりつつ様々な犯罪を犯して巨利を得る、という傾向が、今後、ますます強まるのではないかと私は考えています。そうした、社会にとって大きな脅威になる流れに対応するために、捜査というものをいかに大きく変革、進化させるべきか、ということも、必要な予算の投入も含め、考えておかないと、国民の平和な生活が、ますます脅かされることになりかねないのではないか、ということを、本書を読み終え、痛む足を引きずりながら歩きつつ、感じました。