http://www.norway.or.jp/news_events/policy_soc/policy/2011722/
昨夜、南麻布にあるノルウェー大使館で、上記の講演会があり、興味を感じて事前に申し込み、聴いてきました。主催者によると、当初、80名で参加者を募集したところ、希望者が多く、100名まで増員し、それでも希望者を収容しきれず断らざるを得なかったということで、会場はほぼ満員の盛況でした。
講演会では、カミッラ・ルイーセ・ギスケ氏(ノルウェー警察大学校教授)による「2011年7月22日大規模テロ:その時何が起こったのか、ノルウェー社会は変わるのか」という講演や、エーリク・ナドヘイム氏(ノルウェー国立犯罪防止研究所所長)による「ノルウェーの刑事政策:社会安全のために何をしているのか」という講演等が行われました。
ツイッターでツイート(断片的ですが)しながら聴いていて、その状況は、下記のまとめにある通りですが、ノルウェーの刑事政策の特徴については、
1 犯罪率の低さや治安の良さ、重武装をを避ける警察の在り方
2 犯罪者に対する処遇のソフトさ(社会内処遇を重視し最高刑が懲役21年、独居を厳格に運用するなど人道性が強い)
3 警察が様々な組織や人々と協調しつつ犯罪防止を目指す仕組み(ノルディックモデル)
といった点が印象的でした。
講演では、7月22日の悲惨なテロ後も、国民の90パーセントが死刑制度には反対していることが紹介され、このようなテロがあってもノルウェーの刑事政策は変わらないということが力説されていました。質疑応答の最後に、犯罪防止研究所所長が、すべての国民をよく処遇すべきであり犯罪者への処遇がその社会における処遇の尺度である、と述べていたのも印象的でした。
こういった北欧の刑事政策については、本で少し読んだことがある程度でしかなかったのですが、何を目指し何が行われているかが簡潔に、わかりやすく紹介されていた上、自分自身として興味があった、テロを契機に国民による刑事政策への考え方が大きく変わるようなことがあったかどうかについて、それはなく従来の方針が堅持されつつあるということを知ることができたのは有益でした。
こういった路線には、日本でも学ぶところは多いとは思いますが、人口が大きく異なり(ノルウェーの総人口は約500万人)、治安情勢(ノルウェーで年間に発生する殺人は数十件にとどまる)や国民の考え方も大きく異なる日本で、何をどこまで取り入れられるかについては、例えば死刑制度1つを取ってみても両国民の考え方は著しく異なるような状況の下、なかなか難しいものはあるのではないかと率直に感じるものがありました。
とはいえ、テロ後にあっても、ノルウェー首相による、
という言葉に現れているような、人道を重視し人を信じ更生させることを目指す、ノルウェーや同国民の志の高さには感銘を受けましたし、現在の日本の流れとは大きく異なるだけに、謙虚に学ぶべきところは多いように思いました。
このような貴重な機会を与えていただいた、講師やノルウェー大使館、関係者の方々に深く感謝しております。ありがとうございました。
講演では、7月22日のテロの惨状や犠牲者の方々も紹介されていて、思いがけず貴重な生命を失い、怪我をした人々や関係者の人々には心痛むものがありました。亡くなった方々のご冥福をお祈りし、負傷した方々の回復を願っています。