ノルウェー 連続テロから1年 苦悩する多文化社会 「開放政策」決意揺るがず

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120723-00000074-san-int

人口約490万の1割以上が移民のノルウェーでは、事件を機に移民の管理強化や流入阻止を呼びかける強硬論も出たが、政府は「怒りにまかせて警察権力を強化して移民を排除しても問題は解決しない」と反論し、多文化主義と開放政策を継続する意向を示した。
ただ、「ドイツを含む欧州では、移民排斥を訴えるネオナチなどの極右組織が活動を禁止されているにもかかわらず拡大している」(英BBC放送)という。

昨年、駐日ノルウェー大使館で開催された、刑事政策に関する講演会を聴講したのですが、

講演会「2011年7月22日のテロでノルウェーの刑事政策は変わるのか 〜犯罪者の更生と社会安全〜」
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20111220#1324346597

そこで紹介されていた、

1 犯罪率の低さや治安の良さ、重武装をを避ける警察の在り方
2 犯罪者に対する処遇のソフトさ(社会内処遇を重視し最高刑が懲役21年、独居を厳格に運用するなど人道性が強い)
3 警察が様々な組織や人々と協調しつつ犯罪防止を目指す仕組み(ノルディックモデル)

といったノルウェーの刑事政策の特徴は印象的で、その背景には、国民性や文化(上記の記事にあるような多文化主義も含め)といったこともあるのではないかと感じます。日本では、厳罰化の必要性が、マスコミ報道も相まって強調される傾向が、近年、特に高まっていますが、厳罰化して長期服役者が増えれば、それを維持するのに多額の税金がかかり支えるのが困難になってくるもので(それが大きく問題になったのが米国でしょう)、また、厳罰化しても、死刑にならない限り犯罪者はいずれまた社会に戻ってくるものですから(厳罰化が社会適応をますます困難にする側面も見逃せないでしょう)、厳罰化と、適度な寛容さや矯正、社会復帰への支援のバランスをうまく見出しつつ刑事政策を展開する必要があると思います。そういった観点で、ノルウェーのようなノルディックモデルは、今後も参考にされるべきでしょう。
上記の記事にあるような問題に、ノルウェーが、いかに対処し乗り越えて行くかにも、社会のひずみが大きくなり不安定さが増す中で排外主義等が高まりつつあるようにも見える日本が参考にできることはあるかもしれません。