転落:落とし穴に落ち、夫婦死亡 妻、砂浜に友人と掘る−−石川

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110829ddm041040125000c.html

同署によると里沙さんは同日午後から、友人の男女5人と遊びに来ていた。友人の話では、裕樹さんが来月上旬に誕生日を迎えることを機に落とし穴で驚かそうと、里沙さんと友人が昼過ぎに掘り、シートをかけて上から砂をかぶせたという。
一度、金沢市内の自宅に戻った里沙さんが裕樹さんと現場に戻り、落とし穴まで案内したが、浜辺が暗いため誤って2人で転落したとみられる。シートの上にかぶせてあった砂が、転落に伴って穴に向かって落ち込む形となり、2人は砂に埋まったらしい。

報道によっては、重過失致死罪が成立する可能性も、としているものもありますが、理論上は、傷害致死罪が成立する可能性すらあると言えるように思います。
重要なのは、夫を穴に「落とす」ことを想定して、皆で穴を掘っていることで、それ自体、穴への転落を企図し、その危険性が大きい行為で、穴に落ちてしまう人の行為を利用した、それ自体が暴行行為、という評価も可能でしょう。上記の記事では、「誤って2人で転落したとみられる」とありますが、穴に落とすために妻が夫をおびき出した可能性が高く、そのために海岸を歩いている時点で、先に穴を掘ることで着手した暴行罪の実行行為を継続していた、という評価も可能で、2人して穴に落ちたのは妻にしてみれば誤算、錯誤があったにせよ、客観的な行為と故意が、暴行罪という構成要件内で符合していて、その結果、夫が死亡した以上、傷害致死罪が成立する、という見方も成り立ち得るように思います。
穴を掘ることに協力した友人らも、暴行罪の実行行為に主体的に関与したものとして、暴行、さらには死亡という結果が発生している以上、傷害致死罪の共同正犯になり得ます。
軽い気持ち、面白半分でやったことと思われますが、刑法上の犯罪としては、重大なものが成立する可能性すらあると言え、軽はずみな行動が招く深刻な事態、結果ということを考えさせられます。