危険運転適用「常軌逸している」 東名あおり運転、懲役18年  地裁判決

危険運転適用「常軌逸している」 東名あおり運転、懲役18年 |カナロコ|神奈川新聞ニュース

深沢裁判長は判決理由で、被告が4度にわたって行った割り込みなどの妨害運転について、「同罪の実行行為に該当する」と指摘。その後ワゴン車を路上に止めた行為や、停車後に一家ともみあいになり路上にとどまらせたこととも「密接に関連する」とし、「一家の死傷結果は、被告が妨害運転に及んだことで生じた」と判断して同罪の成立を認めた。

 危険運転致死傷罪は、元々は刑法の「傷害の罪」の章に規定されていたもので、重大な死傷につながる危険が高い危険運転行為を「暴行」に準じるものと見て、死傷結果が発生した場合に傷害致死並みの処罰にする、そういう立法趣旨で作られたものです。

従って、危険運転は、あくまで車両の走行に伴って生じることが想定されており、走行しなくなった後の(停止後の)危険は想定されていません。

上記の判決は、危険運転を経て車両が停止し、停止後に「路上に止めた行為」「停車後に一家ともみあいになり路上にとどまらせたこと」を密接に関連するとして、危険運転行為との因果関係を認めてしまっていますが、それらは、危険運転の「危険」が現実化したものではなく、別個の危険と見るべきです。そのような危険を招いた被告人の行為は悪質というしかありませんが、危険運転致死傷罪が想定する「危険の現実化」とは言えないと思います。判決は、そこを、「密接に関連する」という言葉でごまかしてしまっています。

私の手元にある

刑法各論 第2版

刑法各論 第2版

 

でも「危険運転致死傷罪は、危険運転行為に認められる危険が死傷結果に実現したときに成立する」としていて、立法当時、法務省は、自動車の直前への飛び出しによる事故の場合、結果の発生が運転行為の危険性とは関係なく因果関係が否定され本罪の成立が否定されるという説明をしていたことが紹介されています(53-54ページ)。判決の密接関連理論(?)なら当然に密接に関連しそうですが、そうは見られていないわけです。

私の予想では、この判決はかなりの確率で高裁で破棄されるでしょう。

本件では、裁判所の示唆により、監禁致死傷罪が予備的訴因として追加されたと報じられていました。監禁罪は、一定のエリアから被害者を脱出不能、困難にすることによって成立し、高速道路の追越車線上に無理やり停車させれば、他の車両が高速で絶え間なく走行する中、そこからの脱出は不能、困難になりますから、私は、監禁致死傷罪は成立するのではないかと見ています。

高裁でこの判決が破棄された場合、予備的訴因での認定ということになる可能性が高いでしょう。

こうした「処罰の間隙」が存在するのは好ましいことではなく、道路交通法で、あおり運転そのものや、道路上での危険場所での停車といったことを禁じ、そういった行為から死傷の結果が生じた場合、内容に応じて重く処罰するという規定を、早急に設けるべきだと思います。道路交通法を所管する警察庁が行うか、議員立法で対処すべきでしょう。