ネット削除、動く警察 「みる・きく・はなす」はいま

http://www.asahi.com/special/10005/OSK201105010101.html

こんな情報もデマと判断され、削除された。
「ガソリン抜き取りや火事場泥棒が報告されている。こういう時だからこそ助けあおう」
宮城選出の参院議員、熊谷大氏(36)=自民=が3月17日にツイッターに書き込み、だれかがネットに転載したものだった。
削除は警視庁の要請だった。ところが、警察庁の樋口建史・生活安全局長は3月30日、「(被災地で)ガソリンの抜き取りや侵入窃盗が相当数発生している」と衆院法務委員会で答弁した。
書き込みはなぜ、デマ扱いされたのか。同庁の担当者は「都道府県警の判断だ」と説明。答弁については「答える立場にない」と話した。

先週木曜日夜、ニコ生に呼ばれて、このテーマで議論したのですが、最も本質的な問題は、誰がどのようにしてデマと判断するのか、そういった機能を、公権力が担って良いのかということでしょうね。上記の記事にもあるように、都道府県警察の判断でデマとされたものが、より上位機関である警察庁によりデマではない、と判断されることもあり、警察内部ですら、デマかどうかについて判断が異なるケースも出るほどですから、公権力が強権的に臨むべき問題でないことは明らかです。後からデマではないとわかっても、上記のように、無責任な対応で知らぬ顔、というのも大きな問題でしょう。
関東大震災当時も、朝鮮人が襲ってくる、といったデマが飛びかい無実の人が殺傷されるといった惨事に発展しましたが、当時と今とで大きく異なるのは、今は、問題となる情報の多くはネットで流布され、そういった情報は、誤っていると判断されれば、判断した多くの人々によって訂正する情報を発信することも可能ということです。ここが、かつてのデマ、流言飛語が流れ放題という時代とは異なります。デマを擁護、正当化することは、もちろんできませんが、表現の自由を尊重しつつデマを排除するためには、そういったソーシャルメディアの特性を良く理解し、警察等の公権力としても、削除、削除と騒ぎ強権的に臨むのではなく、公権力もソーシャルメディアの輪の中にうまく入って行って、日頃から存在感、信頼感を培い、誤った情報については根拠を示して訂正する情報を発信し、良識、見識ある人々と協調して、誤った情報を表現の自由市場から淘汰して行く、という方向で進める必要があるでしょう。憲法の世界で表現の自由が語られる時、「思想の自由市場」ということがよく言われますが、自由で民主的な社会では、そういった場で、自由な表現行為が活発に行われ、多くの人々の目に触れる中で、誤った情報(デマを含む)が淘汰されるべきであり、インターネット上の表現については、それがかなりの程度可能になっているということも言えると思います。
諸外国の政府機関が、ツイッターフェイスブックなどでアカウントをとり、日々、地道に情報発信しているのも、正しい情報を発信して多くの人々の正しい理解を得ることの重要性を認識しているからこそと思われますが、そういった活動をしている人々、組織に、上記の記事で日本警察が行っているような事柄を伝えれば、なぜ、そのようなことをするのか、何ら抜本的な解決にはならないにと、不思議がるのではないかと思います。デマだ、流言飛語だと騒いで無理に削除させても、ネット上の情報というものは繰り返し容易に発信されるもので、正しい情報で対抗、排除することが行われないと、単なるイタチごっこで終わってしまいます。
ソーシャルメディアの時代における、表現の自由を尊重した、デマ、流言対策ということを、遅まきながら早急に検討して手法を確立しておくべきでしょう。>警察庁等の政府機関