【電子版】シンガポール、偽ニュース防止法が成立 グーグルは決定に警告 | ICT ニュース | 日刊工業新聞 電子版
新法では「虚偽で国益に反する」情報と閣僚が判断した場合、書き込んだ個人や掲載したメディアは削除を命じられる。個人には最大で禁錮10年が科される可能性がある。地元メディアによると、シャンムガム法相は議会で、偽ニュースが拡散すれば政府への信頼が揺らぎ、民主主義の根幹が脅かされると対策の意義を強調。野党は「独裁政権のようだ」と反対したが、与党・人民行動党(PAP)が圧倒的多数の議席を握るため、法案は難なく成立した。
情報発信が極めて容易になり、フェイクニュースが氾濫する現在は、「表現の自由」に関する従来の議論が厳しく試されようとしている、そういう時代でしょう。
従来の議論では、表現の自由は最大限尊重されるべき、民主制の根幹であり、誤った表現行為は自由市場の中で淘汰されるという、自浄作用に大きく期待した考え方が主流であったと思います。しかし、膨大な情報が流通し、一旦、誤った情報が流布され始めると、そうした自浄作用が期待できないほど氾濫し、偏った、歪んだ世論が形成されていく、それに対処するには、従来の議論はあまりにも無力ではないかという疑問が出てもなんら不思議ではありません。
対処の方向性の1つが、上記のようなシンガポールでの行き方でしょう。権力が、フェイクニュースから国民を守る存在として大きく身を乗り出してくるわけです。そうなれば、権力により何がフェイクニュースかが決められることになり、民主制の根幹として位置づけられてきた表現の自由は大きく変容せざるを得ないでしょう。では、他にフェイクニュースの氾濫、蔓延を抑止する手段はあるか、ということが問われているのではないかと思います。
民主制を崩壊させかねない、由々しき問題状況が今後も続きます。