募金詐欺、個々の被害特定は不要 最高裁が初判断

http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010031901000779.html

偽の街頭募金活動で、個々の被害者や被害額が特定できなくても詐欺罪が成立するかどうかが争われた刑事裁判の上告審決定で、最高裁第2小法廷は19日までに「募金に応じた多数の人を『被害者』とし、募金の時期や場所、被害総額を示せば成立する」との初判断を示した。

古田佑紀裁判長は「募金に応じた人に対し、詐欺罪が成立していることは明らか。通行人に連日、決まった働き掛けをする募金活動は、被告一人の意思に基づいて継続して行われた」と認定。
「被害者は名前も告げずに立ち去るのが通例。募金箱に入った現金は直ちに混ざって特定もできなくなる」と募金による詐欺行為の特徴を指摘、被害を全体としてとらえる「包括一罪」の考え方を適用して詐欺罪が成立すると判断した。

以前、

<詐欺募金>被害4000万円、任意団体代表を再逮捕
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20050730#1122691576

とコメントしたことがありますが、理論としては、最高裁が示したような判断はあり得ると思うものの、このように訴因の特定が緩和され、罪数についても包括一罪という考え方で大胆に割り切られると、事案によっては被疑者、被告人の防御権を危うくしかねないのではないか、と危惧も感じます。
これも以前コメントした

一審無罪の元従業員に逆転有罪=温泉宿泊施設横領−高松高裁
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090919#1253326952

は、上記の募金詐欺の事件を参考に捜査、起訴されているものと思われますが、今後はこういった手法が積極的に活用される可能性はありそうです。

追記:

判例時報2081号157頁(最高裁第二小法廷平成22年3月17日決定)

コメントで、刑法上、以前、規定があって削除された連続犯の規定も含め、包括一罪についての考え方が丁寧に説明されていて参考になります。コメントでは、「本決定は、限定的な形ではあるが、新たな類型の包括一罪を認めたものとして、罪数論における重要な先例となるものと思われる。」と評価されていますが、限定がどこまで及ぶのか、射程距離はどこまでか、といったことが、今後、問題となり議論されることになりそうです。