ATM・暗証番号等盗撮目的での銀行支店出張所立ち入りと建造物侵入罪の成否(積極)など

判例時報1986号156ページに、最決平成19年7月2日が掲載されていました。
ポイントは2点で、上記の点と併せ、ATM・暗証番号等を盗撮するためのビデオカメラを設置したATMの隣にあるATMを、一般客を装い相当時間にわたり占拠し続ける行為について、偽計業務妨害罪の成立が肯定されています。何が「偽計」にあたるかは、わかりにくい面があり、こういう事例も偽計になる、という先例として、今後の参考になるように思われます。
建造物侵入罪については、以前、本ブログでも

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20041216#1103183769

とコメントしたように、大別して2つの考え方があり、管理者の意思に反したかどうかを基準にする考え方が判例であるものの、住居の平穏を害したかどうかを基準にする考え方も有力です。
実務的な感覚としても、管理者の意思に反した立ち入りであっても、あまりにも平穏公然としたもので、その場所が不特定多数の立ち入りを許容しているような場合、侵入罪の成立認定には躊躇を覚える、という側面もあるように思います。
その点、この最高裁決定は、外形的には平穏公然の立ち入りであっても、侵入と言えるかどうかについては管理者意思を基準に見ることを明示していて、その意味で先例としての価値は高いと思いますが、本件のような違法行為を行う目的での立ち入りではなく、正当な目的による平穏かつ公然としたものについては、やはり、少なくとも違法性レベルで実質的な考慮を行わないと、ビラ配りで逮捕、起訴され有罪となるような人々が続出しかねず、そこは今後の課題と言えるように思います。