http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090414-00000079-jij-soci
判決で同小法廷は「客観証拠が得られにくい満員電車内の痴漢事件では、特に慎重な判断が求められる」と言及。今後の事件捜査や起訴判断に影響を与えそうだ。
教授は2006年4月19日午前8時ごろ、小田急線の電車内で、17歳の女子高生の下着に手を入れるなどしたとして起訴された。
数年前に、一時、地裁、高裁レベルで、この種事件について無罪判決が相次いだ時期がありましたが、最高裁が、上記のように言った上で逆転無罪判決を宣告する、というのは、おそらく初めてではないかと思われ、それだけに、今後に与える影響はかなり大きいと思います。
ただ、元々、この種の事件は、具体的、詳細、明確とは言いにくい被害者供述に依拠した立証を行わざるを得ないという性格が強い上、目撃者も確保しにくく、確保できたとしても、その供述自体、やはり具体的、詳細、明確なものは得にくいもので、過度に証拠評価が厳格になることで、この種犯罪が野放しにもなりかねず、なかなか悩ましいものもあります。
各地検では、この種事件が送致された際には、経験を積んだベテラン検事に配点し、強盗殺人、放火といった重大事件並みの慎重さをもって捜査に臨む、ということが求められるのではないかという印象を改めて受けます。
追記1:
最高裁のサイトで判決書がアップされていたので、一通り読んでみましたが、3対2の僅差であり、問題となった被害者供述の信用性についても、無罪と見た裁判官、有罪と見た裁判官で、微妙に異なる判断が示されていて、この種事件における事実認定の微妙さを感じます。
私自身、性犯罪事案を担当することは時々ありますが、この判決で問題となったレベルの、怪しげな被害者供述というのは結構あって、起訴された事案では、ほとんどすべてが、「具体的かつ詳細」「迫真性がある」「基本部分において一貫」などという、お決まりのフレーズでその信用性が肯定されているという現状があります。
本件のように、たまたま、最高裁で、何かの拍子に調査官か裁判官の目にとまって無罪にしてもらえた事件、被告人はラッキーでしたが、その陰には、問題がありながら闇から闇へと葬られ、やってもいないのに有罪とされ、中には実刑になって服役し家族ともども苦しんでいる人々が大勢いる、ということは言えるのではないかと思います。
追記2:
判例時報2052号151頁