記者の目:裁判員制度 重くなる弁護士負担=銭場裕司

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20080527k0000m070163000c.html

複数の現役裁判官に取材したところ、弁護士の中には新たに証拠請求ができないルールを知らなかったり、接見が不十分なため公判で被告が想定外の弁解を始めて、法廷が混乱したケースもあったという。

日々の取材で感じるのは組織力の差だ。例えば、検察側の場合は、地検の幹部や若手が法廷傍聴に日参して、担当検事とともに公判前後に改善点などを模索している。検事は日々こうしたプレッシャーを受けながら公判に臨んでいる。だが、弁護士の場合、模擬裁判や実際の公判経験が当事者だけに限られて終わっている。

上記のような「組織力の差」は、私のように、「組織」からドロップアウトしてしまうと、痛いほどよくわかります。裁判所、検察庁といった組織の中に身を置いていれば、日々、次々と新たな最先端情報が舞い込んできて、それを着実に身につけておくだけで十分仕事がこなせますが、そうではない環境においては、そもそも、情報を取ることが大変であり、常にアンテナを張り巡らせ、意識して努力するようにしないと、組織力に対抗することは相当困難です。
刑事司法の世界では、残念ながら、裁判所・検察庁連合の力と、それに対する弁護士の力には、例外はありますが、多くの場合、大学生と小学生くらいの格差があり、裁判員制度や公判前整理手続の導入により、力量差が大学院生と幼稚園児くらいにまで開いてしまう可能性があるように思います。
このような大きな格差を、今後、どこまで埋められるかということが、弁護士側の大きな課題でしょう。