国選弁護拡大課題なお 日弁連シンポ・福岡 負担増、弁護士も不足

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/20060909/20060909_001.shtml

ただ、道のりは平たんではない。現在、国選弁護を担っている弁護士数は約1万3500人。これに対して現時点で起訴前弁護に参加する意向を示す弁護士は約5400人。09年にはさらに登録者を増やさなければ対応はできない。

「数」の問題については、今後、弁護士が増加して行くことは確実であり、徐々に、国選の需要を満たす数を確保することはできるだろうと思います。
問題は、「質」の確保でしょう。
私は、検察庁で、公判立会に専従していた時期もありましたが、日本の刑事弁護というものは、満足できる水準にあるものは全体の中では一部で、かなりレベルの低いものも、少なからずあります。あまりにもひどい国選弁護の場合は、国家賠償の問題にもなりかねないので、裁判官や公判立会検察官が、それとなく被告人質問で聞いてあげたり、「こういう証拠は出さないんですか」と聞いてあげる、といったこともやっている場合があります。
裁判官や検察官、裁判所書記官等には、特に刑事で、弁護士を小馬鹿にしている人が多く、それはよくないことではありますが、小馬鹿にされても仕方がないような事態が日常的に生じているのも事実であることは、弁護士としても率直に直視すべき面があると思います。
本日のコメント欄でも指摘されていましたが、弁護士の場合、民事中心で仕事をしている場合が多く、また、特に刑事については、裁判所や検察庁のように知識、経験を共有することが困難であるため、なかなか質を高くして維持しにくいというのが現状でしょう。
私自身は、日本でも、公設弁護人事務所を各地に設置し、公費で維持して、刑事弁護の核となりつつ、特に難しい事件等を積極的に担当する、という制度にしないと、刑事弁護の全体的なレベルアップは望めないと考えています。
ただ、法務省としては、刑事弁護が全体的にレベルアップすることは迷惑であり、「敵」に塩を送るようなことはしたいはずがなく、低いレベルのままで数だけ確保して国民の表面的な満足を得ようとするはずですから、今後も、批判の強い「法テラス体制」で行こうとするのは確実だと思います。
法務省は、実質的に検事によって「支配」されている組織であり、刑事裁判・捜査については、一方の当事者である検察官が、制度作りを完全にコントロールしている、という構造になっていると言っても過言ではないでしょう。私自身、検事の当時は、そのことに疑問を持ったことはありませんでしたが、しがない弁護士になって(弁護士が、皆、しがないと言っているわけではありませんので誤解なきよう)考えてみると、本当に現状でよいのか、弁護士出身の刑事局長就任、といったことがあっても良いのではないか、という疑問を禁じ得ません。