http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080122AT1G2102W21012008.html
弁護側は「否認する被告に逮捕をちらつかせて取り調べており、自白調書に信用性はない」などと無罪主張した。
東京地裁での法人税法違反事件で問題になった、とのことですから、おそらく、東京地検特捜部所属の検察官による取調べと思われます。
今日の日経朝刊の記事によると、「逮捕したろか、本当にもう」といった検察官の言葉も録音されていた、とのことで、その前後の言動にもよりますが、わかりやすい脅迫、という印象を受けます。言っているほうは、まさか隠し録りされているとは思っていなかったのでしょう。取調べの可視化、ということが、なぜ必要か、ということを、わかりやすく指し示す好例ではないかと思います。
現在のように、ICレコーダーが普及する前は、取調べのカセットテープによる録音、ということがあり得る場合、取調官の側で、1時間くらいは、あたりさわりのない話をして、徐々に取調べの核心に入る、テープ切れを狙う、といった手法もありました。現在は、ICレコーダーが普及し、録音可能時間がかなり長時間になっているので、その手法は使えず、取調官側の対策として、具体的にどうしているのかは知りませんが、うかつな取調官の場合、このようなヘマをやる、ということも起きてきているのでしょう。
私自身、若い頃ですが、ある、やや特殊な事件で、在宅の被疑者を、連日、かなりみっちりと取り調べていたことがあり、その際、弁護人が面会を求めてきて、「検事さん、かなり厳しく調べられてますね」などと言われ、はっきりとは言わないものの、どうも録音されているな、と思った経験があります。その事件は、結局、起訴せずに終わりましたが、起訴していれば、取調べの際に隠し録りしたテープが証拠で提出されたかもしれません。「逮捕したろか」などという、愚かなことは言っていなかったので、出されても特に困らなかったとは思いますが。