新司法試験組が初の卒業試験、59人が不合格に

http://www.asahi.com/national/update/1218/TKY200712180323.html

法科大学院修了者を対象にした初めての新司法試験で合格し、司法修習生になった約1000人(新60期)のうち986人が11月、司法研修所の卒業試験を受け、59人が不合格となったことがわかった。

司法試験の合格者が1200人規模だった「58期」までは、不合格者は5人以下で推移していた。しかし、「59期」を中心とする約1500人が受験した昨年の最終的な不合格者は16人、今年夏に卒業試験を受けた「旧60期」を中心とする約1500人のうちの不合格者は71人と急増。最高裁は「合否の判定基準は変えていない」としており、修習に携わる関係者の間では、司法試験合格者の増加に伴う「質の低下」を懸念する声が出ている。

こういった状況について、旧司法試験合格者のほうが優秀だったとか、いや、新司法試験に合格した法科大学院出身者の能力がそれに劣ることはない、などと、一部で議論が白熱しているようですが、司法試験合格者が大幅に増加したことで、本来、この道に入るべきではなかった人が紛れ込みやすくなり、底辺が下がり、かつ、広がったことで、2回試験の不合格者が増えている、ということは言えても、旧司法試験合格者と新司法試験合格者の能力を、上記のような状況で比較し推し量ることは困難でしょう。
2回試験というものは、実務法曹としてスタートラインにつく能力が備わっているかを見る試験であり、それに合格したから実務法曹として「十分な」能力があると認定されるというものではないでしょう。その後、5年、10年、15年とキャリアを積み重ねて行く中で、順調に知識、能力をつけて行けるかどうか、そこが問題ですが、大量合格時代が始まったばかりの今、今後を予想することは困難です。ただ、バラ色の予想をする人は皆無で、懐疑的、あるいは、地獄絵図を予想する人が、法曹界では圧倒的多数であり、厳しい現実がぱっくりと口を開けて待ち構えているように、私も思います。
何とか、国民に不利益を与えないような状態に持って行くためには、実務法曹になるまでの教育の充実、不適格者の排除と、実務法曹になった後の継続教育、不適格者の排除を、車の両輪のように、両方進めて行く必要があります。現在は、前者に議論が集中していますが、私は、後者も非常に重要であり、特に、組織的な教育が難しい弁護士については、充実した制度を設けるようにしないと、これだけの大量合格、大量登録時代では、本当に大変なことになりかねないと危惧しています。
申し訳程度に、弁護士会に人を集めてお座なりの講義をしてお茶を濁す、といったことではなく、年限を決め、その間に法学部や法科大学院などで講義を聞き一定の単位を取得することを義務づけるとか、専門分野について一定の知識、経験を持つことを認定する制度を設けるとか、10年程度ごとに登録を継続するか審査する制度を設け、不適格者は、反論の機会も与えつつ排除すべきは排除する、といったことを、今後、真剣に検討する必要があるでしょう。