先日、取材を受け、記事にならないので、ボツになったのかな、と思っていたところ、今日の日経朝刊に出ていました。
この問題については、以前に、本ブログでも
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070406#1175815004
とコメントしたことがあります。
上記の日経記事の中で、私は、「情報通信の問題に詳しい」弁護士として(ここは、やや「言い過ぎ」の感がありますが)、
「〇一年の最高裁判決を参考にすると、説明が不十分な場合、通信料の全額は払わなくてすむのでは」との考え方を示す。
とコメントしています。
記事中でも紹介されているように、平成13年3月27日の最高裁判決(同じ日に同じ問題について3件の判例がありますが、その中の最高裁判所第3小法廷判決・平成7年(オ)第1659号)では、当時、社会的にも大きな問題になっていたダイヤルQ2について、
ダイヤルQ2事業は電気通信事業の自由化に伴って新たに創設されたものであり,Q2情報サービスは当時における新しい簡便な情報伝達手段であって,その内容や料金徴収手続等において改善すべき問題があったとしても,それ自体としてはすべてが否定的評価を受けるべきものではない。しかし,同サービスは,日常生活上の意思伝達手段という従来の通話とは異なり,その利用に係る通話料の高額化に容易に結び付く危険を内包していたものであったから,公益的事業者である上告人としては,一般家庭に広く普及していた加入電話から一般的に利用可能な形でダイヤルQ2事業を開始するに当たっては,同サービスの内容やその危険性等につき具体的かつ十分な周知を図るとともに,その危険の現実化をできる限り防止するために可能な対策を講じておくべき責務があったというべきである。本件についてこれを見ると,上記危険性等の周知及びこれに対する対策の実施がいまだ十分とはいえない状況にあった平成3年当時,加入電話契約者である被上告人が同サービスの内容及びその危険性等につき具体的な認識を有しない状態の下で,被上告人の未成年の子による同サービスの多数回・長時間に及ぶ無断利用がされたために本件通話料が高額化したというのであって,この事態は,上告人が上記責務を十分に果たさなかったことによって生じたものということができる。こうした点にかんがみれば,被上告人が料金高額化の事実及びその原因を認識してこれに対する措置を講ずることが可能となるまでの間に発生した通話料についてまで,本件約款118条1項の規定が存在することの一事をもって被上告人にその全部を負担させるべきものとすることは,信義則ないし衡平の観念に照らして直ちに是認し難いというべきである。そして,その限度は,加入電話の使用とその管理については加入電話契約者においてこれを決し得る立場にあることなどの事情に加え,前記の事実関係を考慮するとき,本件通話料の金額の5割をもって相当とし,上告人がそれを超える部分につき被上告人に対してその支払を請求することは許されないと解するのが相当である。
と判示しています。
上記の判決文中に、「上記危険性等の周知及びこれに対する対策の実施がいまだ十分とはいえない状況にあった平成3年当時」とあるように、最高裁判決は、事実認定の問題として、そのように認定した上で、上記のような判断をしたものであり、パケット料金の問題について同種の紛争が起き、ダイヤルQ2訴訟と同一のスキームで判断することになった場合、やはり、そこ(危険性等の周知及びこれに対する対策実施の十分性)が大きな問題になってくるのではないかと思います。
日経の担当記者にも言い、上記の記事でもそこは踏まえられていますが、パケット料金に関する各携帯キャリアの説明、各種対策は、まだ十分ではなく改善の余地があるものの、かなり進んできているのは事実で、上記の最高裁判例を根拠に、安易に料金の減免を求めるのは危険であり、あくまでも一つの「可能性」として見て行く必要がある、と私は考えています。