法律事務所のもめ事に関する裁判例

判例時報1966号(平成19年7月11日号)78ページ以下に、どこかの法律事務所における、分裂、合併等に伴うもめ事に関する裁判例が掲載されていました。
判例時報のコメントでも指摘されていましたが、今後、法律事務所の規模が拡大し、組織変更が行われることがますます多くなるという状況の中で、参考になる裁判例ではないか、と思いました。
特に、旧法律事務所で使用していた弁護士個人の姓について、その弁護士が新法律事務所に参加しない場合、その姓が「仮称」として使用されたことについて、氏名権侵害の不法行為が否定されていて、興味深いものがあると感じました。裁判所は、承諾なしの姓使用が権利、利益を侵害する面があることは否定できない、としつつ、姓を使用された弁護士が翻意して新事務所に参加する可能性があると考えられたことに無理からぬ面があることなど、本件の具体的事情の中で違法性を否定していて、事実関係によっては、この種の行為が違法となることは十分あり得るでしょう。
この種の紛争を未然に防止するという観点でも、参考になる裁判例ではないかと思いました。