ビーチバレー浅尾 撮影したら「警官」呼ばれる?

http://news.livedoor.com/article/detail/3149518/

この問題については、先日、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070506#1178377841

で若干コメントしましたが、刑事、民事に分けると、刑事面では、砂浜でビーチバレーをしている有名人(当然、誰の目にも触れている)を、公道から撮影する行為自体を処罰する刑罰法令は見当たりませんから(そのような行為が処罰されるようでは、怖くて屋外で撮影はできなくなるでしょう)、「刑事事件」として取り扱うのはおかしいと思います。
残るは民事面ですが、記事では

知的所有権に詳しい松村信夫弁護士は、肖像権を中心とするパブリシティ権については、定義がはっきり定まっておらず、個人が撮影した映像をネット上で無償利用する場合、認められるかどうかは微妙な問題だ、という。しかし、利用されたサイトなどに対し削除を求めることはできても、撮影を禁じるのは拡大解釈し過ぎではと指摘する。屋内なら施設管理権としてフラッシュ撮影を禁止するなどは認められるが、屋外では理由を見つけるのが厳しい。倫理的な是非はともかく、法律的には任意で協力を求めるしかないのではという。

とありますが、肖像権には、みだりに自己の容貌を撮影されない権利も含まれますから、基本的な部分で、権利の一環として、撮影しないことを求めることは可能です(肖像権を是認した著名な刑事判例でも、そのことは明確に述べています)。
ただ、以前コメントした最高裁判例が述べているように、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20051111#1131641206

人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって,ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは,被撮影者の社会的地位,撮影された被撮影者の活動内容,撮影の場所,撮影の目的,撮影の態様,撮影の必要性等を総合考慮して,被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。

とされていますから、撮影が、上記のような「許されるべき場合」にあたれば、肖像権の行使として「撮影しない」ことを求めることはできなくなります。そして、そのような場合にあたるかどうかを、ビーチバレー会場やその周辺にいる個々の撮影者について判断して行くことは、非常に難しいと言えるでしょう(例えば、マスコミ関係者ではなく純然たる個人であっても、自分のブログでビーチバレーの様子を伝えたい、ということであれば、許される場合も出てくると思います)。
したがって、私の考えとしては、上記の偉い弁護士の先生の考え方とはやや異なり、肖像権の行使として「撮影しない」ことを求めることはできるものの、ビーチバレー会場及びその周辺で現実的にできることは、撮影しないことを要求することにとどまり、それ以上の手段をとることは事実上不可能で、警察官を呼ぶのはお門違い、ということになります。
どうしても撮影されたくないのであれば、無人島の砂浜のようなところでビーチバレーを行い、観客については厳重な所持品検査を行って、カメラ等が持てるのは許可を受けた者に限る、といった方法でもとるしかないでしょう。それでも、ボートで接近して海上から撮影するとか、ヘリを使うなどして上空から撮影する、ということはやろうと思えばできますから、パーフェクトではありませんが。