取り調べの録画録音、「裁判員制度」に向け試行

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000006-yom-soci

関係者によると、取り調べ過程の録音・録画は、当面、東京地検での取り調べに絞って7月ごろから1年半程度試行し、メリットとデメリットを検証したうえで、本格導入の可否を探る。

この問題に頑強に抵抗していた法務・検察、警察当局ですが、説得的な論拠も尽き果て、遂に、法務・検察は、こういう流れにならざるを得なかった、ということでしょう。
今後は、
1 録画・録音が行われる事件の範囲、程度(全部は無理としても、全体に占める割合が低すぎれば問題でしょう)
2 記録の保存方法、保存期間(検察庁にとって不利なものが意図的に廃棄、隠ぺい等されるおそれの排除)
3 警察捜査への拡大(警察当局は、死に物狂いで組織をあげて抵抗するでしょう)

といったことが問題になると思われます。

追記:

「警察での試行は慎重検討必要=取り調べ可視化で警察庁刑事企画課長」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060509-00000042-jij-soci

太田課長は「公判で任意性立証の責任を有する検察官が公訴官の立場から試行すると聞いている。警察は第一次捜査機関として真相解明のために取り調べを行っており、録音・録画は取り調べの機能を害し、治安の維持に悪影響を生じかねない」としている。 

任意性立証のためには真相解明の機能が低下しても仕方がない検察庁とは違う、とでも言いたげなコメントですが、検察捜査であれ警察捜査であれ、公判準備のため行われるものであり、検察庁と警察は違うんだ、と強弁しても、説得力はないでしょうね。
警察当局があくまで録画・録音に抵抗すれば、わけのわからない取調の結果として作成された警察調書の証拠能力を原則として認めない、といった方向で進んで行く可能性もあるでしょう。自分達が作った調書が、せいぜいメモ代わり程度にしか使われない(メモ代わりにすら使われない可能性も出てきます)、では、やりがいもなく悲しいでしょう。
可視化に頑強に抵抗するだけでは、結局のところ、「治安の維持」を図ることができなくなる、ではどうすべきか、という発想も持たないと、このままでは追い込まれて行くだけ、ということになりかねません。
ちなみに、私自身は、単に可視化だけ導入すればよい、という意見ではなく、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20040828#1093658381

取り調べ状況については、一定以上の重大事件は録画、それ以外の事件は録音を義務づけて一定期間保存することとし、その一方で、司法取引や刑事免責の制度も導入し、現在、上記のような「カウンセリング作業」に投入している捜査機関の多大な労力を、より合理的に活用して行くべきである

という考えを持っています。