「正式裁判になるのか略式命令になるのか?」

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050910/1126315904

確かに、ケースバイケースですが、正式裁判でも略式手続でも、どちらにもなり得る事件も少なくありません。
私が検事だった時には、事件の配点を受けると、当初の時点で、処分について大体の見通しをつけるようにしていました(もちろん簡単に見通しがつかない事件もありますが)。正式裁判にしかならない事件もありますが、当初の見通しの時点で「これは公判請求にもなるし略式でも行けるな」という事件は結構あり、その後、捜査が進む中で、「どちらにしようか」と検討することはよくありました。
事実関係が明らかなのに被疑者の態度が悪かったりすると、「こういう反省のない人間は公判請求だな」と思って(好き嫌いで決めるのではなく情状評価を行っているわけです)略式にせず公判請求したこともありますし、真摯に反省していて被害者に対し誠意ある対応を行っていたりすると、公判請求できる事件でも情状面を考慮して略式にしたということもありました。
そのあたりは、検察官の裁量の余地が結構大きい面があり、被疑者としては、弁護人ともよく相談の上、良い情状をきちんと検察官に評価してもらえるように努力、工夫することが重要ではないかと思います。
刑事事件をあまり手がけない弁護士の場合、そのあたりの事情に疎く、十分な弁護活動ができない恐れがありますから、可能であれば、手慣れた弁護士に依頼したほうが良いと思います。

追記:

上記の奥村弁護士のエントリーでも触れられていましたが、処分の見通しに関する、警察官の言動は、あくまで参考にとどめ信じ込まないほうが身のためです。
検察官が刑事処分を決定する際には、検察庁内部の求刑基準や、その事件のあらゆる情状、同種・類似事件の処分状況を参考にします。警察官は、あくまで自分や同僚が取り扱った事件の過去の処分結果を踏まえ、単に「経験的に」見通しを語るだけですから、自ずと限界があります。
この点は、弁護士も同様です。私の場合、一般的な弁護士よりは見通しが立てられるほうだとは思いますが、最近は、刑法上の法定刑の引き上げ、それに伴う求刑基準の見直し等もありますから、質問されても、断定を避け、安易に楽観的な見通しは語らないように注意しています。