http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2005083101002497
この「控訴趣意書を期限までに提出しなかったこと」に対する評価には、なかなか難しいものがあるでしょう。
裁判所からの再三にわたる催促、警告にもかかわらず、被告人と打ち合わせができなければ控訴趣意書が書けない、と言い続けて期限までに提出せず、その結果、それが原因で控訴棄却となり、その後、例えば、被告人の家族から、「控訴趣意書を提出せず、審判を受ける機会を失わせた」といった懲戒請求が弁護士会に出された場合、弁護士会は、「裁判所の判断に誤りがあるから弁護士に責任はない、懲戒は不相当である」と言ってくれるのでしょうか?
「オウム松本被告の弁護団、控訴趣意書を提出せず」
http://www.asahi.com/national/update/0831/TKY200508310313.html
刑事訴訟規則では、期限が来た後の提出でもやむを得ない事情による場合は、期限を守ったとみなせるとされる。高裁がどこまで「やむを得ない事情」と認めるかが今後の焦点になりそうだ。
ポイントの一つは、どのタイミングで弁護団が控訴趣意書を出すかだ。鑑定結果が出た段階で控訴趣意書が提出されず、かつ、高裁が鑑定結果をもとに「訴訟能力あり」と判断した場合、控訴審の公判が開かれないまま、控訴が棄却される可能性がある。一方、鑑定結果が出た段階で趣意書が提出され、高裁が「訴訟能力あり」と判断すれば、控訴審の公判が開かれることになる。また、高裁が「訴訟能力なし」と判断すれば、公判停止になるとみられる。
今後の展開の中で、控訴趣意書不提出が救済される可能性はありますが、一種の危うい綱渡りのようなものではあります。
刑事弁護人として、ここまでリスキーな訴訟活動を行って良いかどうかは、議論が分かれるところでしょう。
私なら、裁判所の訴訟指揮に関する問題点は強く主張しつつ、控訴趣意書については、可能な限り作成して期限内に提出し、期限後も補充を行う(補充書を提出)という方法を選択すると思いますが、これが正しいと断言する自信はありません。